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第10章 閉ざされた扉は再び開くか?

平成十七年六月二十九日、東京地裁第六二六号法廷において、私は被告(株)報恩社の代表取締役として証言をした。私は僧侶Aより一連の電話盗聴事件に関する情報を入手したこと、入手した資料やカセットテープを分析したこと、それらの証拠物がどのような意味を持つものか等を縷々述べた。そして『「地涌」選集』出版前において渡辺を二度取材した経過、その後、ただちに大石寺に赴き同寺の周辺調査を行なった結論を述べた。

◆私は「妙泉坊の件」は電話盗聴未遂であると証言した

私は、妙泉坊に対して電話盗聴を行なうために大石寺を訪れたという渡辺茂夫と(株)帝国リサーチの社員であった辻栄三郎の動線と、電話盗聴器の特性ならびに大石寺の電話配線のあり様から、渡辺と辻が大石寺を訪れた目的は、渡辺が話しているように、妙泉坊に対する電話盗聴であると結論した。これらのことにつき、私は(株)報恩社の訴訟代理人である幸田勝利弁護士の尋問に対して、次のように証言を行なった。

被告株式会社報恩社代理人幸田

乙ホ第12号証(報告書)を示す(著者注 本書第5章参照)

幸田 これが取材の具体的な内容を書いた報告書。これはこの裁判になってからあなたが依頼してる今井弁護士宛に書かれたものということですね。

北林 はい、メモに基づいて記憶を喚起して書いたものです。

幸田 渡邉さんからいろんな話をお聞きになってるようですけども、あなたがこの盗聴に関連して、特に興味を引いた話というのはどういう話でしたか。

北林 渡邊さんの話の中で興味を持ちましたのは、大石寺の中における渡邉さんと辻さんとの動線、これがどういうふうな大石寺境内地をこの両名が動いてるのか、そういうことについての動きが非常に興味がありました。

幸田 そういうことに興味を持たれて、実際に大石寺にあなたは取材に行かれましたよね。

北林 はい、行きました。

幸田 これはいつ頃になるんですか。

北林 その2回目の取材の直後にまいりました。

幸田 大石寺の中に入ったわけではないんですよね。

北林 境内地には入りませんでした。

幸田 大石寺周辺に行かれて、まずどのような調査をされましたか。

北林 最初に大石寺の従業員の方に事情を聞きました。そうしましたら平成3年当時に静岡電話工業との管理契約が継続していたと。したがって、そういう常駐してる者達抜きでの調査がないということが分かりました。

幸田 電話調査であれば、そういうところに依頼するだろうということはすぐ分かったわけですね。

北林 はい。

幸田 それから従業員の方に聞かれた後はどんな調査をされましたか。

北林 大石寺周辺の配線状況、外線、外に出てる地上の配線について見ました。

乙ホ第127号証(大石寺周辺主要電話配線図写し)を示す(著者注 巻末資料6参照)

幸田 これが当時の状況を示したものですか。

北林 はい、そうです。

幸田 赤線部分は何を意味していますか。

北林 赤線は地上の電話の配線を示しております。

幸田 A、B、C、D、Eというポイントは何を示してますか。

北林 これについては陳述書に細かく書いておりますけども、A、Cは大石寺内に組み込まれてるものです。Bは売店に入ってるものです。特に重要なのはD地点において地下から地上に電話回線が出ております。それは主なものはEの宗務院に向かっております。その余ったものがFのほうに延伸してるという流れがありました。それが主な流れです。その上の部分については美術館とか正本堂関係で、一連の調査とは若干違う、主要な部分への調査とは違うと。しかし、大石寺総体の調査となれば、この上の部分も全部、調査の必要があったろうと思います。

幸田 上というのは。

北林 G、H、I、J、Kです。

幸田 この大石寺全体の電話配線を見た時に、電話盗聴をするとしたらどこにしかけるんだろうかということは考えてみましたか。

北林 考えました。

幸田 大石寺全体を盗聴するとしたら、どこをするだろうということは考えてみられましたか。

北林 それについてはD、E間が最も盗聴するものであれば、それを狙うだろうというふうに思いました。それにつき根拠はDで中央ケーブル、地下から地上に出てる。そして全ての重要な線、阿部日顕さんを含む重要な線が全てD、E間を通ってる。したがってD、E間でやることにおいては不法侵入にもならない。また、電池の交換も自由である。また取りつけもしやすい、電波の傍受も楽だと、そういうことでもってD、E間を外しては盗聴ということは、まずここを外すことは調査においてはあり得ないと。

幸田 しかけるのもそこだし、調査においてもそこは外せないということですか。

北林 そういうことです。

幸田 大石寺の特定の坊が盗聴されてるかどうかを調査するとしたら、どこを調査するんですか。

北林 その場合もD、E間に特定の坊の回線を通ってるわけですから、ここをしないということはありません。

幸田 必ずここもするわけですね。

北林 はい。

幸田 そうすると大石寺の妙泉坊の件であなたが聞いている辻さんと渡邉さんの動線、これにおいてはD、E間に行ってないわけですね。

北林 はい、そうです。

幸田 D、E間に渡邉さんと辻さんが足を運んでないということはどういうことを意味してますか。

北林 これは妙泉坊のマンホールを開けてる経過から、この妙泉坊という特定坊に対しての盗聴行為、これ以外にはありません。

幸田 この現地調査の結果、全体としてどういうことが分かったんでしょうか。

北林 これはさかのぼりますが、平成8年の慧妙2月1日号、そこにおいて福田インタビューが載っておりますけども、これが真っ赤な偽りで、その慧妙に載った福田インタビュー、それ自体が盗聴をやった者同士の共謀した証拠隠滅行為であるという結論に達しました。

(妙観講不当訴訟・平成十七年六月二十九日「北林調書」二一頁)

これは私の主尋問での証言の一部だが、そのことについて原告妙観講および大草の訴訟代理人弁護士である小川原弁護士が反対尋問で触れた。その時のやり取りの一部は次のようなものであった。

小川原 渡邉さんと大草さんの関係についてはどう思ってましたか。

北林 仲がいいんだというふうに考えてました。

小川原 渡邉さんと大草さんが仲がいいと思ってたわけ。

北林 実行行為当時は当然そうだと思いました。

小川原 実行行為当時とか何かということで伺ってるんじゃなくて、お話を伺ったのは平成9年でしょう。平成9年8月の段階で北林さんは渡邉さんに会って話を聞いたというんでしょう。

北林 取材当時ですね。その時は仲悪いというふうに当然、その内容から見てもお分かりになるように、それは内容に分かるように仲悪い。

小川原 そうすると、仲の悪い人間はその対象になってる人間のことを歪めて悪く北林さんに伝える恐れがあるんじゃないかという危惧は抱きませんでしたか。

北林 それは抱きます。

小川原 その危惧はどうやって拭えばいいと思いましたか。

北林 したがいまして大石寺の現地調査に行って動向等を確認して、間違いなく、妙泉坊が盗聴未遂であるというふうな現地調査をすることによって、その疑念を晴らし、彼自身が真実を述べているというふうな結論に達しました。

小川原 大石寺の現地をちょっといろいろ調べられたということだけども、それだけでは渡邉さんが大草さんに対して深い恨み、強い恨みを抱いていて、平成3年当時のことについて虚偽を述べるかもしれないと。それだけでそういう恐れを拭うに足りると思ったんですか。

北林 大石寺のD、E間の配線、この内容とそして盗聴の技術、そういうものを見れば、明らかに特定坊に対する盗聴行為以外にないんですよ。これは技術的にもし説明しろということだったらいくらでもしますよ。そういうことを分からないことを利用して、 こういうふうな不当訴訟を起こしてきてる。そういうことが許せないっていう思いですよ。そういう物理的な、科学的な、技術的な無知に対して、つけ入る、あるいは大石寺の規模が妙泉坊1つにしても弁護士会館1つに当たる。150万坪以上のそういう霞が関の官庁街一帯を含むだけの大きさにあると、そういうものを抜きにして判決が行われてる。そういうことについて私は情けないという思いがします。

(「同」三八頁)

この私の証言に対して、原告代理人の小川原弁護士は、気押されたかのように一歩退いた。そして尋問内容のテーマをまったく別のものに変えてしまった。

◆弾劾証拠で大草の信用は地に堕ちた

平成十七年七月二十七日、日蓮正宗妙観講講頭・大草が原告として証言をした。経歴等は別にしても、事件に関わる骨子の部分はことごとくデタラメであるので、紙面の都合上、これを割愛させていただく。

なお、(株)報恩社のウェブサイトには、大草の全証言を掲載しているので、興味のある方はそちらをご覧いただきたい。

反対尋問によって、大草の主張は証拠をもとに徹底して砕かれていったのだが、裁判所は先行二訴訟にしばられて、すでに判決結果を想定していたように思える。大草が徹底して弾劾証拠でやられても、それが事実関係の上でどのような重要な意味を持つのか、わからなかったのではあるまいか。また、私が書いた「A期」と「B期」に時期を分けた長文の説得性のある「陳述書」も、この時点では読んでいなかったのではないかと、その後、思う。なお、この時(株)報恩社代理人が大草に対する尋問において示した証拠は、二十六点に及んだ。大草の虚偽の主張は、それらの証拠によって完全に覆されていった。しかし、先行二訴訟にしばられていた裁判官には、反対尋問で大草の証言が行き詰っても、裁判の骨子を覆すものには映らなかったように思われる。

大草への反対尋問が終わったあと、裁判官は弁論終結を十月十二日にすると言い渡し、それまでに必要があれば書面を提出するようにと述べた。しかも判決予定日として、翌平成十八年二月二十二日を指定した。

私は愕然とした。たとえば被告側へ「最終準備書面」の提出期日を言い渡す程度ならまだしも、判決予定日までも指定するということは、すでに東京地裁民事四一部合議一係の裁判体は、先行二訴訟にしばられた判決を下そうとしていると思えた。先行二訴訟の判決の事実認定を覆すという思いがあるならば、私が証人として出廷を求めている(株)帝国リサーチの実質的な経営者である福田政、同社の代表取締役で経理をつかさどっていた福田惠美子(旧姓塩谷)、渡辺が(株)帝国リサーチに電話盗聴を依頼しに行っていたとき同社の窓口であった池田、あるいは妙泉坊電話盗聴事件(未遂)の実行犯である辻のうち、一人でも証人として法廷に呼んでくれるはずである。それを呼ばないということは、先行二訴訟の判決における範囲で事実認定をし、よしんば被告側の一部を勝訴させたとしても「真実性」ではなく「相当性」の範囲にとどめるのではないか、と私は考えた。

このまま終わらせてよいはずがない。

私は(株)帝国リサーチ発行の「請求書」に記された「妙泉坊の件」が、大草や小川只道が言うような大石寺全体に対する電話盗聴器発見調査などではなく、「妙泉坊」という特定坊に対する電話盗聴未遂であることが立証できたならば、妙泉坊住職の八木信瑩が大石寺ナンバー2の主任理事という立場にあることからして、一連の電話盗聴事件が渡辺ごときの判断と資金で行なわれたものではないと裁判所も理解できるはずだと考えた。したがって私は、私の訴訟代理人である七人の弁護士の連名で意見書を九月九日付けで東京地裁に出してもらった。その意見書の全文は以下の通り。

意 見 書

平成17年9月9日

東京地方裁判所民事第41部合議1係 御中

被告(株)報恩社訴訟代理人           

弁 護 士 今 井 浩 三       

弁 護 士 稲 毛 一 郎       

弁 護 士 松 村 廣 治       

弁 護 士 幸 田 勝 利       

弁 護 士 平 井 龍 八       

弁 護 士 清 王 達 之       

弁 護 士 國 重   徹        

本件訴訟は次回(平成17年10月12日)に結審される予定となっているが、被告(株)報恩社(以下「報恩社」という)は証人辻栄三郎(以下「辻」という)の尋問を実施されたく以下のとおり意見を述べる。

1 本件訴訟では、小川只道(以下「小川」という)が訴外(株)帝国リサーチ(以下「帝国リサーチ」という)に依頼して実施した大石寺の調査が、盗聴器探査であったのか、それとも盗聴未遂事件であったのかが争点の一つとなっている。この大石寺への調査依頼が実は妙泉坊の盗聴未遂事件であったことが明らかとなれば、「Xの件」「宣徳寺、秋元広学の件」と並んで「妙泉坊の件出張費」と記載されている請求書(乙ホ1の2)が大石寺に見せるために作成されたものであることが明らかとなり、本件各盗聴が被告渡邉茂夫の単独で実施されたものではなく、日蓮正宗、原告妙観講の関与のもとなされたという事実の立証につながるのであり、妙泉坊の件は本件訴訟の重要な争点と言うべきである。

しかも、本件訴訟以前にX裁判、Y裁判の判決が既に確定しているが、いずれの判決も妙泉坊の件が盗聴未遂事件であったかどうかについての認定は行っておらず、本件訴訟において、妙泉坊の件が盗聴未遂事件であったかどうかについて充分な審理を尽くす必要性は高いのである。

2 この妙泉坊の件が妙泉坊に対する盗聴行為であったのか、大石寺全体についての盗聴調査であったのかについて語ることのできる証人は、盗聴に関する専門知識を有し、実際に実行行為を行った辻しかおらず、辻にどのような機材を使い、どのような行動をとったのかについて、専門的知識を踏まえて証言させれば、盗聴未遂事件があったかどうかは直ちに明確となる。

しかも、X裁判で原告大草一男(以下「大草」という)が辻の証人申請をしていたにもかかわらず採用されないまま訴訟が終結し、辻はX裁判、本件訴訟を通じて1回も法廷で証言していないし、辻の陳述書(乙ホ19)が提出されてはいるものの、大石寺での具体的な活動については全くといっていいほど記載されていない。この点について、大草は、報恩社代理人から、妙泉坊の件が盗聴調査であるというなら、何故辻にそのことを明確かつ合理的に分かるように陳述書に記載するよう依頼しなかったのかと尋ねられても、大草は依頼したときの状況を「よく覚えていない」とはぐらかした供述を行い、さらに辻の陳述書(乙ホ19)に大石寺の調査内容が載っているかどうかも覚えていないなどといった不合理な弁解に終始している(大草調書39頁?40頁)。このような大草の不合理な供述態度から、大草は辻に当日の行動を記載させれば実際には盗聴行為を行おうとしたことが明らかになるだけであるから、敢えて当日の辻の行動を陳述書に記載させなかったのではないかとの疑いが強まった。

3 このように、妙泉坊での辻の行動が盗聴行為であったか、それとも盗聴器探査であったかは重要争点であり、かつ、辻のみがこの点について真実を語ることのできる唯一の証人であること、これまでの証拠調べではこの点について、なお充分に取調べが行われていないことは明らかであるから、辻の尋問は必要不可欠であるので、辻に対する証人尋問を是非とも実施されたい。

以上

このように、「真実性」の立証のために不可欠な辻を証人として法廷に呼ぶことを、私は訴訟代理人の「意見書」によって要請した。しかし、東京地裁の民事四一部合議一係は、

「新たな証人尋問を行なう予定はない。辻を証人に呼ぶこともない」

と(株)報恩社の訴訟代理人に伝えてきた。

これで裁判所の心証がよくわかった。やはり先行二訴訟にしばられた判決を書くつもりなのだ。新たな証人調べもしないまま、先行二訴訟が覆るような事実認定が行なわれるはずがない。もし、被告側が勝つとしても「相当性」の範囲に限られるだろう。また、「相当性」を理由にすべての被告が勝訴できるとは限らない。

口幅ったいようだが、(株)報恩社は「相当性」の範囲では勝てると考えていた。『「地涌」選集』刊行前に、私は僧侶Aからの資料をもとに、それを分析し、録音テープ等の期日分析等も詳細に行なっていた。また、渡辺に対しても取材を行なっていたし、それに基づき大石寺の電話回線の配線状況までチェックしていた。加えて大石寺の従業員からも取材をしていた。このような取材実績からして、私は「相当性」の範囲であるならば、(株)報恩社は間違いなく勝訴すると考えていた。

しかし、そうはいかない。

「相当性」の範囲にとどまる勝訴であるならば、結局のところは電話盗聴犯を逃がすことになる。そして電話盗聴という社会的犯罪は、虚妄のものとして闇に葬られることとなる。ましてや被告にされた創価学会が敗訴にでもなれば、原告妙観講並びに大草は電話盗聴犯であるにもかかわらず、真実の報道をした創価学会に対して誹謗中傷を繰り返すだろう。その誹謗中傷の根拠は司法の下した誤判によることになる。司法が悪人を加勢する、その不条理だけは、どうしても受け入れがたい。

◆こうなったら猛然と書くしかない

私は猛然と四万一七三八文字に及ぶ「陳述書」を三日で書き抜いた。そして、平成十七年十月五日付で東京地裁に提出した。

第1 貴法廷が真実性において確たる心証を得られたと窺知すること

1 妙観講と(株)帝国リサーチが「交渉」を持っていたことは看過できない事実

(1)私は平成17年2月22日、同25日、同27日付で、「陳述書」(乙ホ70、71、90)を貴法廷に提出した。この「陳述書」は、平成11年7月15日に行なわれたX裁判の証拠調べにおいて、訴外(株)帝国リサーチ(以下、「帝国リサーチ」という)の証人福田政(以下、「福田」という)が、原告大草一男(以下、「大草」という)代理人の質問に答える中で、以下のような重要事実を述べたことを、論述の起点として行なったものである。

「例えば妙観講の本部へ行かれたことはありますか。

分かりません。

そうすると、妙観講とそういう形での交渉をしたことは一切ないですね。

いや、現在はございます。

現在じゃなくて、要するに渡辺さんとの関係がずっと続いてる間。

ございません」(乙ハ16「X裁判第11回口頭弁論調書」85頁)

福田が平成3年当時、渡邉茂夫(以下、「渡邉」という)との「関係」が切れた後において、妙観講と「交渉」があると証言したことから、一連の電話盗聴犯である帝国リサーチと大草、妙観講側との関係性を、昭和61年から平成17年の現在まで、詳細に期に分けて前記「陳述書」において論じた。

(2)名誉毀損事件においては報道した側に立証責任が課せられている。そこで(株)報恩社(以下、「報恩社」という)が当法廷において、人証として申請したのは報恩社代表取締役の私と、「妙泉坊の件」に関わったことを認めている帝国リサーチの社員だった辻栄三郎(以下、「辻」という)、X裁判ならびにY裁判において電話盗聴実行犯であると認定された帝国リサーチの代表取締役・福田恵美子、同社の実質的支配者であった福田政であった。このように被告側に立証責任を求めた名誉毀損事件の事情に鑑みれば、一貫して報恩社が真実の究明のためには、少なくとも辻への尋問が不可欠であるとし、かつ私も「陳述書」(乙ホ90)において、辻への尋問は必然である旨を、X裁判、Y裁判の経過を踏まえて述べてきたのであるから、辻の証人としての採用は当法廷において当然行なわれるべきことであった。

しかしながら、実際には本法廷においては本件訴訟当事者の尋問のみで結審し、「妙泉坊の件」について大石寺に行ったことを認めX裁判において「陳述書」(乙ホ19)を大草側より提出し、大草側も同裁判において証人として申請していた辻の証人としての採用は、本法廷においてなされなかった。

それに対して不服として本年9月9日付をもって、被告報恩社代理人弁護士連署の上で、真実性立証のため、訴外辻の証人調べが不可欠である旨の「意見書」の提出を行なったが、これをもってしても辻の証人としての調べはなされないこととなった。

(3)本法廷が、国民より付託された法の秩序を維持するために活動し、真実を見極め、不正を糾す責務を担っていることは言うまでもない。このような観点から思惟するならば、本法廷は私が先に提出した「陳述書」(乙ホ70、71、90)の主旨を理解され、証拠説明、口頭弁論を経て、辻の証人尋問をするまでもなく、本件報道が真実であり原告が請求原因としている電話盗聴事件が存在し、かつその電話盗聴事件に原告が関与しているとの心証をすでに得られているものと判断せざるを得ない。

2 大草が証言において「交渉」「通謀」への論及を避けたのは、その事実を認めたも同然であること

(1)私は「陳述書」(乙ホ70、71、90)において、妙観講側と電話盗聴実行犯である帝国リサーチとの「交渉」「通謀」を問題にし、合理性のある主張をしたが、それに対して大草は、本年7月27日に行なわれた第21回口頭弁論において、何ら具体的な反論を行なっていない。

このことは、妙観講側と帝国リサーチ側とがX裁判、Y裁判などにおいて「交渉」「通謀」していた事実を、大草側が認めたことを意味している。

(2)私の「陳述書」(乙ホ70、50頁)には、X裁判、Y裁判において帝国リサーチ側の代理人となった訴外木皿裕之弁護士を、妙観講側が斡旋した事実について論及しているが、それについても何ら具体的な反論を大草は行なわなかった。

(3)第21回口頭弁論における大草の証言において、「交渉」のあるかないかに言及し、ある場合は具体的「交渉」事実を摘示し、私が主張する「交渉」の内容と現実は違うということを説得力のある形で証言する必要があった。大草が証言において「交渉」「通謀」に対する具体的反論をなさなかったことは、この「交渉」「通謀」について触れると、より一層、傷が深くなると大草側が判断したことを示している。

(4)今後、大草及び妙観講が文書でもって、「交渉」「通謀」についていかなる主張をなそうとも、それは裁判官の心証を形成する材料にはならないものであると判断する。

3 小結

真実の立証のために不可欠な辻が証人として採用されなかったこと、大草がその証言において帝国リサーチとの「交渉」「通謀」について一切、触れなかったことにより、裁判官において「陳述書」(乙ホ70、71、90)に記された大草ら日蓮正宗側と帝国リサーチ側との間に、「交渉」「通謀」があったことを認められたと確信する。

このことは一連の電話盗聴事件についての報道が真実であり、大草並びに妙観講の名誉を毀損することではないことが立証されたこととなる。

(妙観講不当訴訟・平成十七年十月五日付「北林陳述書」四頁)

◆盗聴犯は私の情報源を否定する

電話盗聴犯である原告大草にとって、僧侶Aが実在することは致命的なこととなる。したがって、大草は証言において、私が僧侶Aから入手した資料につき、渡辺からY、Yから創価学会を通じて北林に流れたという絵図を描いて見せた。これは訴訟の途中で、原告妙観講並びに大草が、被告らが共同不法行為を行なったとの請求を追加し、それを主位的請求に変更したことと関係がある。原告らは、被告らの共同不法行為を成立させるのと同時に、僧侶Aの存在を抹消させようとする魂胆なのであった。

(株)帝国リサーチから平成三年一月二十二日付で渡辺宛に発信されたファックス文書は、「本山」には内緒にしておいて「45%引き」なのであるから、「本山」側にいる僧侶Aがそれをもっていることはない、との論理立てを原告らはしてきたのである。しかし私は自らの「陳述書」や証言において、そのファックス文書が「本山」より出てきたものであるとは決して断定していない。ただ、僧侶Aより入手したと言っているだけなのである。

また、私はそのファックス文書を「本山」より入手したと断定していないとしながらも、それは、そのファックス文書が阿部日顕に見せられた可能性は否定していない。

たとえば原告大草が、

「猊下、『宣徳寺の件』『妙泉坊の件』などといった記載のある『請求書』は、本山に出すわけにはいきませんが、実際はこれだけの費用がかかっているのです。しかし、年会費を払って特別会員になっているので四五パーセント引きです。Xの電話盗聴費用と、ほぼ同額となりますので、Xの件一本で本山より支払いをしていただけますか」

と述べたのではないかと考えた。

これはあくまで仮定の話であるが、電話盗聴が大石寺ナンバー2が住職をする妙泉坊にまで及んでいることからして、ここまでの会話がなされたことも想像できる。また、原告大草の話の相手が小川只道であった場合も、同様な会話の成り立つ可能性がある。

原告大草がどう言おうとも、僧侶Aよりの資料の一切は、僧侶Aが信頼できるとする人物より渡された情報であり、その情報内容は、私の分析と裏づけによって正しいものであることがはっきりしている。それでは再び、私が辻の証人尋問を要請した「陳述書」に戻ろう。

第2 僧侶Aは実在すること

1 宗内の現状を無視した大草の主張

(1)

① 原告大草は、平成17年7月27日に行われた第21回口頭弁論の主尋問において、次のように証言した。

「北林氏が本山の中枢にいる僧侶Aから入手したと言って出してきた資料ですが、この資料の中に渡邉と帝国リサーチなる会社の裏約束というか、裏取引のようなファクス文書がございまして、本山には内緒にしておいて45%引きで渡邉が払って、本山には正規の料金で出して、その分を渡邉が儲けるような、そういう話の文書があったと思うんですが、結局、本山に内緒で裏取引をするような文書が本山にある。あるいは中枢の僧侶Aが持っていて、そこから北林に入るということは、これはあり得ない。渡邉の手元にしかそれはないはずですから、これがやっぱり入ってるということは、渡邉が持っていた資料が北林氏に行ってると。僧侶Aからではないということですね」(第21回「口頭弁論調書」13頁)

「Yを窓口として創価学会を通じて北林の手に渡った」(同14頁)

② 大草はこの45%引きの「請求書」(乙ホ1の2)について、同証言において「渡邉が儲けるような、そういう話の文書」「裏取引をするような文書」などと言っているが、45%引きの「請求書」(乙ホ1の2)に記載された金額は「2,416,290円」であり、さらに本山に出され会計処理されたことも考えられる「請求書」(乙ホ1の1、「本山」に出されたことは乙ホ2より理解される)に記載された金額は「2,354,580円」である。2つの「請求書」(乙ホ1の1、1の2)に記載された金額は、このようにほぼ同じであり、かつ「本山」に出されたか、あるいは「本山」に出された上で会計処理された「請求書」(乙ホ1の1)のほうが「請求明細書」の性格を持つ「請求書」(乙ホ1の2)よりも金額が低い。

したがって「請求書」(乙ホ1の1)が「本山」に出される際、その事情説明のために「請求明細書」の性格を持つ「請求書」(乙ホ1の2)及び「請求書」(乙ホ1の1)と「請求書」(乙ホ1の2)の関係を示すためにファックス文書(乙ホ2)が請求の事実を示すために「本山」に示されたことも考えられる。その上で、大石寺あるいは理境坊などの会計において宛名が空欄となり「Xの件」とのみ書かれた調査費が必要経費として会計処理をされた可能性があることは否めない。

③ このようなことを考えれば、その「請求書」(乙ホ1の1)が「本山」に出されたことをもって、もう1通の「請求書」(乙ホ1の2)すなわち「請求明細書」が「本山」に出されなかった、あるいはファックス文書(乙ホ2)が「本山」側に渡されなかったということを断定することはできない。むしろ、「請求書」(乙ホ1の1)の裏づけとして「請求書」(乙ホ1の2)並びにファックス文書(乙ホ2)が大草より小川や阿部日顕に示された可能性もある。

④ そもそもこの電話盗聴を指示した「本山」は、X宅、宣徳寺及び未遂に終わったとはいえ妙泉坊の電話盗聴を裁可しているのであるから、それら3つの事案が記載された45%引きの「請求書」(乙ホ1の2)を仮に見たとしても、なんらそれをもってその電話盗聴を仲介した者たちが不正に金員を取得したというふうには考えないし、「本山に出すので正規の料金で請求書を作成して欲しい」というファックス文書(乙ホ2)が存在したとしてもそれは本山内の経理処理上、必要な「請求書」(乙ホ1の1)が作成されたということを、「本山」側の読む人をして推測せしめるもので、これら2つの「請求書」(乙ホ1の1、1の2)とファックス文書(乙ホ2)を見ても〝渡邉が裏で儲けている〟と非難することはない。

⑤ 私は第20回口頭弁論において以下のように述べている。

「乙ホ1の1と乙ホ1の2と2枚の請求書があるわけですけども、この関係についてはどのように考えましたか。

この関係については、1の1、これは宛先がない形になっております。しかしながら両方とも、一方は1の2は渡邉さんになっておりますが、平成3年12月9日付で同日付であります。そして実際にXの件ということで1の1にある228万6000円という消費税抜きのもの、1号証の2のほうのXの件228万6000円、これが一致することによって1号証の2のほうが明細書で1号証の1が実態的な表の請求書であるというふうに判断いたしました。

要するに1号証の1のほうは消費税がきちっと加算されているということも1つの大きな根拠なんですね。

はい、消費税があるということをもって判断いたしました」(第20回「口頭弁論調書」11頁)

したがって、本件電話盗聴を一括して命令した「本山」側が乙ホ1の1と乙ホ1の2という、正確には「請求書」とその「請求明細書」の両方、そしてその事情を示すファックス文書(乙ホ2)を持っていたとしても何ら不思議なことではないのである。

(2)大草の言う「渡邉と帝国リサーチなる会社の裏約束というか、裏取引のようなファクス文書」「本山には内緒にしておいて45%引きで渡邉が払って、本山には正規の料金で出して、その分を渡邉が儲けるような、そういう話の文書」自体は存在していない。ファックス文書(乙ホ2)は渡邉が裏約束をしていたことを示すものでも、渡邉が何らかの差益金を得ようとしたものでないことは、「請求書」(乙ホ1の1)と「請求書」(乙ホ1の2)の記載金額がほぼ同じであることから理解される。ところが大草は、ファックス文書(乙ホ2)と請求明細を示す「請求書」(乙ホ1の2)の解釈を〝渡邉が不正に金を儲ける〟ものと意図的に曲げ、本山中枢情報に関わる僧侶Aがそれを所持しているのはおかしいとし、僧侶Aの存在をも打ち消そうとしている。

だが現実には「本山」側によって「請求書」(乙ホ1の1)、「請求書」(乙ホ1の2)及びファックス文書(乙ホ2)が所持されても、決して不自然ではない。現に私は本山中枢情報に関わることのできる僧侶Aよりそれら3つの書類を含む書類、電話盗聴テープ及び情報を入手した。その現実を口先だけで覆そうとする大草の主張は、言えば言うほど不自然さが露呈するのみである。

(3)大草がファックス文書(乙ホ2)や請求明細の性格を持つ「請求書」(乙ホ1の2)について、「渡邉と帝国リサーチなる会社の裏約束というか、裏取引のようなファクス文書がございまして、本山には内緒にしておいて45%引きで渡邉が払って、本山には正規の料金で出して、その分を渡邉が儲ける」ことを示すものであるとし、そのような真実に反した評価を下し、その目先をごまかした論拠に基づき単に請求の「明細書」であるとの同「請求書」(乙ホ1の2)の性格を意図的に曲げて主張していることは、この2つの「請求書」(乙ホ1の1、1の2)及びファックス文書(乙ホ2)が本件電話盗聴の真相解明において極めて重要な役割をするが故に看過できず、目くらましの論を展開しているに過ぎない。

(4)

① 私は第20回口頭弁論において次のように一連の情報が入ってきたルートに対する分析を述べた。

「そうなると本山に対して正規の料金で、渡邉さんに対しては45%引きなんだよという資料が本山の関係者の手元にあったらおかしくありませんか。

そんなことはないんじゃないですか。

なぜ。

本山の関係だというふうに今、特定されますけども、本山の関係のAさんという方が入れたルートについて、本山の関係者であるのか、末寺の関係者であるのか、妙観講内の渡邉派あるいは大草派、そういう人達もなくなってほしいと思ってる方がいらっしゃる。あるいは妙観講の大草さんに対してあまりよく思っていらっしゃらない、法器会の早瀬日慈さんの系統ですけども、そういう方も当然、そういう出てくるルートの1つとして大きく考えられる。そういう観点はありますよ」(第20回「口頭弁論調書」29頁)

私は多様な視点から僧侶Aの入手した情報ルートについて考えを及ぼしてきた。

② ファックス文書(乙ホ2)それ自体にしても、その真の依頼者が「本山」とはいえ、X宅、宣徳寺並びに妙泉坊に対する電話盗聴事件についての費用を帝国リサーチに支払う窓口が大草であるのだから、それが大草側に渡っていないと考えるほうが不合理である。大草が説明のために「本山」関係者に見せた場合に僧侶Aがそれらの文書を入手する可能性についても先述したが、別の可能性として、何らかの形で妙観講内の反大草側からそれが出家世界に抜け、それを僧侶Aが入手する可能性もある。

③ そもそもファックス文書(乙ホ2)は、宛先が空欄となっている「請求書」(乙ホ1の1)の発行に伴いその説明をする中で渡邉側に送られたものであり、渡邉はそれをもって第三者に説明を行なう必要があったのである。それ以外にこの2通の「請求書」(乙ホ1の1、1の2)とファックス文書(乙ホ2)を渡邉が帝国リサーチに発行せしめる理由はない。

渡邉が一連の電話盗聴事件の真正の依頼人であり、かつ支払いをなす者であったならば、「請求書」(乙ホ1の1)は存在するはずがなく、ファックス文書(乙ホ2)すらもまた存在するはずがない。さらに「請求書」(乙ホ1の2)は電話盗聴の対象と実行日を記載したものであり、それ自体が電話盗聴という違法行為を裏づけるものであるから、渡邉が真の依頼者で真の支払い人であるなら、むしろその発行を拒むのが自然である。渡邉は「渡邉」宛に出された盗聴対象と実行日を記載した「請求書」(乙ホ1の2)など、電話盗聴テープを入手しているのだから必要とてしないし、もし必要としたにしても帝国リサーチと渡邉のみが了解でき、他者に電話盗聴の裏づけではないかと推測されるような「請求書」(乙ホ1の2)を作り出すことは、その危険性から鑑みてありえないことである。

④ これら「請求書」(乙ホ1の1、1の2)及びファックス文書(乙ホ2)が存在していることは、このファックス文書(乙ホ2)が渡邉宛に送られたものであり、「この件(2、354、580円)の請求書分は本山に出すので正規の料金で請求書を作成して欲しいとの事で、前回お渡し致しました」と記されているのだから、明らかに渡邉以外の者が真正の依頼者であり支払い者であることを示し、それが「本山」であることは疑い得ないことである。なおこの当時の渡邉に「本山」を電話盗聴の命令者とする「謀略」を行なう動機はない。2つの「請求書」(乙ホ1の1、1の2)とファックス文書(乙ホ2)は当時の経過の中でそれなりの事情があって作られたものである。

(5)渡邉はこれら3つの書証の存在について私の取材に対し以下のように話している。

「北林 『塩谷』から出されたファックスのコピーを見せ、『本山に出す』と書いてあることの説明を求める。

渡邉 猊下の関与は認めるが、オフレコにして欲しい。まだ公にできない。

北林 平成3年12月9日付のX単独分の請求書と同日付の4件一括の請求書を見せて、説明を求めた。

渡邉 請求書が2種類あるのは、すべて大草の指示。Xについては正規料金分と4件分割引の両方があるが、本山に出す分は正規料金での請求分だった。4件一括分は会員割り引き。細かい経過は、まだ話す気にならない」(乙ホ12「報告書」12頁)

この3つの書証について合理的に説明し得るのは、この渡邉の説明以外にあり得ない。そうであるならば、この3つの書証が作られたのは「大草の指示」に基づくものである。したがってこの3つの書証は妙観講の大草側に渡ったものであり、大草が「本山」側に事情説明をした時に電話盗聴の内容報告に際しこれら3つの書証を見せた可能性がある。

(6)小結

渡邉が電話盗聴実行指示者であるならば、電話盗聴が違法行為であることは渡邉においても熟知していることなのであるから、金員のやり取りにおいて普通、請求の明細のやり取りは必要ない。渡邉及び帝国リサーチ共にそのような書類を作成すること自体に大きな危険が伴う。ましてや「請求書」(乙ホ1の1)に「機械設置(本人現住所アパート)」として、「500,000円」、「調査機関3日間(川口)」として「11/12、13、16」「80,000円×3 240,000円」と列記したり、「請求書」(乙ホ1の2)の明細に「機械設置(宣徳寺)」として「調査期間 16日間」「11/2、3、6、7、8、9、10、12、13、14、15、16、18、19、20、21」「80,000円×16 1,280,000円」と記したりすることは、渡邉が真の電話盗聴依頼者であり金員の支払い者であれば、まったく必要ないことである。同様のことは、Xに関する「調査報告書」(乙ホ4の1)の「本人宅に特殊工作を設置」との記述や、「11月7日(木曜日)夜、工事完了。以後十数日間にわたり、調査するも成果なし(不使用)一旦、機器、その他を引き上げる」といった記述は、渡邉と帝国リサーチの間で口頭で話し合えばいいことで文書にすることは、何ら意味をなさない。大草、渡邉共に嘘の供述をしているとしても、「請求書」(乙ホ1の1)、その明細を示す「請求書」(乙ホ1の2)、ファックス文書(乙ホ2)ならびに「調査報告書」(乙ホ4の1)という書証を見れば、この電話盗聴の実行者が「本山」であることは動かしがたい事実である。

なお付言するまでもないが帝国リサーチの福田はX裁判の証言において「請求書」(乙ホ1の1)、「請求書」(乙ホ1の2)が帝国リサーチにより作成されたものであり(乙ハ16「X裁判第11回口頭弁論調書」51頁)、ファックス文書(乙ホ2)が帝国リサーチから発信されたことを認めている(乙ハ16「X裁判第11回口頭弁論調書」52頁)。

(「同」六頁)

◆裁判官! 坊主社会を理解してください

前述したように、原告妙観講らは電話盗聴に関わる資料等が渡辺→Y→創価学会→北林を経て『地涌』で報道された、と情報ルートを一本線に絞って見せた。そうしなければ原告らの主張する被告側の共同不法行為が成立しないからである。

しかしながら、日蓮正宗の出家たちは非常に噂好きである。これは日蓮正宗の出家に限ったことではない。日本全国のあらゆる宗派の出家たちは噂好きである。私は社団法人日本宗教放送協会の機関誌『宗教評論』の編集長として、日本宗教界に起きたいくつもの事件を取材したことがありよく知っている。噂はその日のうちに全国を駆け巡るし、機密資料も漏洩して北海道の果てから九州に至るまで行き渡ってしまうのである。

創価学会を平成三年秋に破門にして以降、日蓮正宗の出家たちの関心事といえば、対創価学会の情報、あるいは"法主"がこう言った、ああ言った、お仲居(法主付役僧)がなにしたなどといったことで、それらのことを暇に任せて話しまくっていたのである。だいたいにおいて末寺住職というものは、葬儀と法事のとき以外は、時間的制約を受けていない。一日のうちの多くの時間が自由時間なのである。もちろん中には例外もあるが、それは特別な者である。それでは再再度、辻の証人出廷を要請した「陳述書」に戻ろう。

2 日蓮正宗内には血閥、法類などの派閥が存在

(1)大草は、渡邉は日蓮正宗の末端信者であり、僧侶Aは本山の中枢にいる人物であるから、ファックス文書(乙ホ2)が、本山中枢の僧侶Aのもとにあったはずがないと主張しているが、この大草の主張の矛盾については「第2」の「1 宗内の現状を無視した大草の主張」において反論した。さらに加えてこの大草の主張が日蓮正宗の組織構造にそったものでないことを述べておきたい。

(2)大草の主張は、日蓮正宗の組織においては守秘義務が守られ、同宗の組織が完璧なピラミッド型構造であるというまやかしを前提にして述べられているものである。しかし、日蓮正宗の実情を知る者からすれば、まさに噴飯物の論であると言わざるを得ない。

概して僧侶というものは噂好きであり、僧侶の世界において秘密が守られることはまずない。だからこそ阿部日顕も、電話盗聴を命じるにあたり、世襲的に僧職についてきた「代々坊主」ではなく、僧侶世界に血縁関係を持たない「一代坊主」である理境坊住職・小川只道(以下、「小川」という)と在家の狂信者である大草ならびにその支配下にあった妙観講の渡邉を使ったのである。

日蓮正宗内部には複雑な血縁関係が存在する。すなわちA住職の娘はB住職の嫁となり、その子供はC住職で、その嫁はD住職の娘、というような関係があり、血閥は複雑に入り組んでいる。

僧侶の肉食妻帯が許された「太政官布告第一三三号」(「自今僧侶肉食妻帯蓄髪等可為勝手事但法用ノ外ハ人民一般ノ服ヲ着用不苦候事」)が出されたのは、明治5年4月25日であるが、この時以来、百有余年において、日蓮正宗内では極めて濃密にして複雑な血族関係が作られていった。日蓮正宗には「出家のほうが在家よりも上」という差別構造に基づく発想があり、聖職者の「俗よりも俗」としか言いようがない生活実態を信者に知られたくないという心理から、出家間の血閥形成が長期にわたって行なわれ、その構造は複雑にして密接なものになっていったのである。

加えて日蓮正宗においては「法類」という、派閥関係にも似た人間関係が成立している。かつては末寺住職が師となり、末寺において弟子を取っていたので、ある特定の「代々坊主」を中心とする「法類」というグループが日蓮正宗内にできたのである。昭和30年代半ばに末寺住職が直接弟子を取ることが禁じられ、昭和35年3月28日より小学校5年生(後に中学1年生に改正)を対象に小僧を取るという少年得度(年分得度)制が始まった。これにより、子供の時からの先輩後輩の関係は、同じ釜の飯を食ったという連帯感と同時に、年少者の時からの人間関係をもとにして、派閥にも似たグループを形成するに至っている。

それ以外にも、青年になってから得度した者(青年得度)たちが、幼少より得度した者たちに差別されるという構造の中において一群を形成しており、それらの者たちがまた、先述した特定の「法類」「血閥」と密接または疎遠な関係を形成しているのである。

(3)ここで若干、日蓮正宗内に存在する「法類」による派閥について述べておきたい。

現法主である阿部日顕を中心とする阿部閥は、本来、代々坊主の派閥である。阿部日顕の父親は大石寺の第60代法主を務めている。ただし、阿部派は弱小派閥である。日蓮正宗内における現状の最大派閥は、前法主・細井日達管長当時に総監を務めた早瀬日慈が率いていた、東京・池袋に所在する法道院を拠点とする旧・大石日応(第56代法主)閥である。この閥は「法器会」を称し、宗内において固い結束を持っている。

(4)前法主・細井日達管長が昭和54年7月22日に急逝したため、次期法主に対する後継指名はなされず、阿部(当時、総監)、早瀬日慈(当時、能化)、椎名法英(当時、重役)の談合によって後継法主が阿部であると決められた。阿部日顕の長女である百合子が早瀬日慈の四男である妙国寺(板橋区)の住職・早瀬義純と結婚していたため、阿部派、早瀬派の連衡が成立し、早瀬日慈が阿部日顕に譲歩する形で、阿部日顕の法主への就任が成り立った。しかし、平成11年12月、早瀬義純が急逝したため、今、阿部派と早瀬閥との関係は、かつてのような親密さを保っていない。

さらに前法主・細井管長時代に年分得度した者たちを中心とした「妙観会」という、いわば細井系の派閥も宗内に存在する。この「妙観会」がほぼ「一代坊主」で形成されていることから、それに対抗する「代々坊主」として阿部閥、早瀬閥は共通の利害意識を現状も有している。

それ以外に江戸時代の本末関係の名残として、讃岐本門寺系、日向定善寺系の法類もある。

3 日蓮正宗内の情報は速やかに伝播

(1)よって阿部日顕のような独裁者が出た場合、その強権的体質に反発する者、迎合する者、血閥、法類、少年得度、青年得度という複雑な人間関係が力学的に作用し、日蓮正宗内における情報は、上下の別なくやり取りされ、しかもそのほとんどの者が面従腹背であるという現状の故に、その情報伝達速度は極めて速いものになるのである。

(2)このように日蓮正宗内の実情に照らせば、末端信者とはいえ妙観講の教学部長をしていた渡邉が仮に持っていた資料であったとしても、ひとたび出家社会にその資料が入ってしまえば、あらゆる人間関係を通じて、その資料がやり取りされるわけである。

ただし、私がこのように書くことは、私が得た僧侶Aの情報が渡邉を源にしているということの経緯を述べているものでは決してない。僧侶Aは信頼すべき人物からそれを得たと私に述べるにとどまったことは、私は証言において明らかにしている(第20回「口頭弁論調書」28頁)。かてて加えて、私は渡邉が陳述していない、「請求書」(乙ホ1の2)に書かれた「名古屋出張の件」が、奥住樹雄氏に対する電話盗聴未遂の費用請求であることを指摘していることに注目していただきたい(「準備書面(1)」3頁、第20回「口頭弁論調書」16頁)。

(3)ここで以上のような宗門の現状について私が言及したのは、宗門というピラミッド型構造をもつ閉鎖社会において、末端信者の持つ資料を宗門中枢の僧侶がもっているはずはないと大草が断言し、北林が資料を入手したのは僧侶Aからではなく、

「Yを窓口として創価学会を通じて北林の手に渡った」(第21回「口頭弁論調書」14頁)

と断定しているためである。

日蓮正宗内の前述したような人間関係を理解し、大草が描いてみせた僧侶の守秘義務を厳守し日蓮正宗がピラミッド構造組織を維持し存在させているかのような記述も、まったくの幻影であると理解するならば、大草は断定しえないことを断言し、共謀を牽強付会に述べようとしているだけだと言わざるを得ない。

4 大草の共同不法行為の主張は単なる憶測

原告大草と妙観講は平成15年11月27日に、被告らの共同不法行為を追加して主位的請求とした(原告「準備書面〈4〉」)が、その立証が大草のこの程度の論述に終わったことは、被告らの「共同不法行為」には確たる論拠がないことを示している。それどころか、この大草の証言は、被告らの「共同不法行為」の根拠が原告側の邪推にすぎないことを示して余りある事実である。(「同」一三頁)

◆綴じられていた真実

裁判所より入手したX訴訟とY訴訟における資料は、(株)報恩社の編集部において一文字一文字ずつといってよいほど精査された。そのような作業の中でいくつもの印象深いことがあった。以下に引用する「陳述書」の内容に関連するエピソードを記しておきたい。

X訴訟において被告大草側より提出された「証拠説明書」を編集部員が見ていた時のことである。

「わあー、たいへんだ。すごいもの発見した」

「なに、なに、なに?」

「えー、なんだ、これは。こんなバカなことあるのか?」

私はその騒ぎを聞きつけて、そこまで驚く内容が何なのか聞いた。はっきり言って、これには私も驚いた。

X訴訟の被告大草の訴訟代理人である遠藤弁護士が作成したはずの「証拠説明書」(平成十二年六月一日付)のヘッダー部分に、ファックス送信された際の印字で「00年06月01日11時50分 宛先033209□□□□ 発信:日蓮正宗 宗務院 渉外部」(電話番号下四桁伏字は著者による)と印字されていたのだ。「日蓮正宗 宗務院 渉外部」といえば、その部長は電話盗聴された宣徳寺住職の秋元広学である。その電話盗聴被害者を部長に戴く渉外部が、電話盗聴犯・大草の援護をして、大草の「証拠説明書」を作成していたのである。

私はその「証拠説明書」をよく観察してみた。するとその「証拠説明書」のヘッダーには、送信年月日や時刻とともに、ページ番号が印字されていた。さらによくみると、この「証拠説明書」は全部で六ページあるのだが、その一ページ目にはファックス送信された際の印字がなく、二ページ目から六ページ目までにファックス送信による印字がなされていた。加えて、この「証拠説明書」の一ページ目には、平成十二年六月一日に東京地裁がこの書面を受け付けたことを表わす印が押してある。

すると六月一日の午前十一時五十分に日蓮正宗渉外部から遠藤弁護士のもとにファックス送信されたものが、一ページ目のフェイスシートを「証拠説明書」の表紙に替えただけで、その日のうちに東京地裁に提出されていたということになる。

私はこの事実を見て、実におもしろいと思った。それは日蓮正宗渉外部が作成した「証拠説明書」を、大草の訴訟代理人がそのまま裁判所に提出していることをおもしろいと思ったのではない。

この「証拠説明書」の印字箇所は、X訴訟において遠藤弁護士が東京地裁に提出し、書記官がファイルした時から、誰の目にも触れていなかったのだ。当然のことであるが、この「証拠説明書」はX裁判に関わったすべての弁護士事務所に渡されていたはずである。しかしそこでも、この印字箇所は隠れて見えなかった可能性が高い。

どこの弁護士事務所でもそうだが、裁判で使用する法律書面は主に女性職員が事務的にファイルしてしまう。実際、「00年06月01日11時50分 宛先033209□□□□ 発信:日蓮正宗 宗務院 渉外部」と印字された箇所の「分」と「宛先」の間には、紐かリングによってファイルされていた際の穴が、丸い薄い影になってコピーされている。この場所で綴じられてしまったら、この印字箇所はまったく目に触れなかったことになる。

X訴訟において大草側の訴訟準備に日蓮正宗渉外部が対応していたという重要な背景事情を示す印字箇所は、ファイルの綴じ代の部分にあったゆえに、平成十二年の「証拠説明書」提出時から平成十七年の発見まで、五年もの間、陽の目を見なかったのである。

死角に真実が眠っていた。

それでは三たび、辻の証人出廷を求めた「陳述書」に戻ろう。

5 日蓮正宗内において電話盗聴の存在は常識

(1)阿部日顕が電話盗聴をしているということは、僧侶Aの情報によっても裏付けられている(「準備書面(1)」2頁、第20回「口頭弁論調書」8、10、30頁)が、この阿部日顕が宗内の様子を電話盗聴という非合法的手段によって知ろうとしていることは、日蓮正宗内においては常識である。現に日蓮正宗渉外部長という要職にある秋元広学・宣徳寺住職は、自ら及び家族の電話での会話が盗聴された録音テープが平成8年1月頃に宗内にばら撒かれた(乙ホ41「X裁判大草陳述書」65頁)にも関わらず、刑事告訴を行なわなかった。なお、帝国リサーチと渡邉の関与が確定した後においても民事上の法的処置を講じていない。これは自らが住職を務める宣徳寺に設置された電話を盗聴した最高命令者が、法主である阿部日顕であると認識しているからに他ならない。

(2)だから渉外部長の秋元が電話盗聴の被害者であるにも関わらず、それに対する法的措置を取ることもしないのに、X裁判の大草側「証拠説明書」(乙ホ145)を、秋元が管掌する日蓮正宗渉外部が大草の訴訟代理人である遠藤厚之助弁護士に代わって作成し、遠藤弁護士がそのファックス通信された「証拠説明書」(乙ホ145)に最初の1ページをつけそのまま提出し、2枚目以降には、「発信 日蓮正宗 宗務院 渉外部」という記録が残るという皮肉な事実が露呈することとなったのである(「第21回口頭弁論調書」45頁)。日蓮正宗内の役僧は自らが盗聴されてもただ忍び、逆に卑屈にも自らに対する電話盗聴をした犯人を組織を挙げて隠匿する共同作業に参加しなければならないのである。これが阿部日顕の宗教的権威権力の下で生きていく出家らの術なのである。

(3)日蓮正宗内において法主に逆らう者に対して電話盗聴をしてもよいという考えが瀰漫していることは、別件の電話盗聴事件によって明らかになっている。すなわち、徳島県にある日蓮正宗寺院・敬台寺住職の日比野慈成は、同寺の執事であった宮川雄法の立寄り先に対する電話盗聴に関与した。この事実はすでに平成11年7月30日の高松高裁判決において確定されている(乙ニ27の2)が、この後においても日比野住職は南四国布教区支院長の要職にそのまま留任し、住職の職責からも罷免されていない。これは絶対的権威権力者である阿部日顕が、自らに敵対する者に対して電話盗聴という不法行為を行なったとしても、それを是としているが故である。(「同」一七頁)

◆「妙泉坊の件」の解明によって真相がわかる

私はこの「陳述書」の「第3」を「妙泉坊の件」に絞った。妙泉坊はこれまで何度も記してきたように、大石寺主任理事、言うならばナンバー2の八木信瑩が住職をしている塔中坊である。その妙泉坊に対する電話盗聴が、大石寺の警備担当の理事である小川の手引きによって試みられたのである。それを正眼視するならば、この事件の本質は否が応でも見えてくる。

その小川はX裁判で証人として出廷したが、私の大石寺現地調査によって判明していること??、すなわち大石寺総体の電話盗聴器調査であるならば、必ず行なわなければいけない区間の調査をしなかったことを、小川の証言は裏づけていた。

これは以下の「陳述書」で論理立てて書いているが、大石寺内の特定坊に対する電話盗聴行為のために渡辺と(株)帝国リサーチの辻が大石寺を訪れたことが、小川の証言に依拠するならば、はっきりしてくるのである。

それでは辻の証人出廷を求めた「陳述書」に戻ろう。

第3 「妙泉坊の件」の究明により同事件が電話盗聴未遂であることがわかること

1 本訴訟は電話盗聴犯が開き直っての濫訴

(1)日蓮正宗総本山大石寺の塔中坊の一つである「妙泉坊」の住職・訴外八木日照(大石寺主任理事、平成3年の事件当時の名は信瑩。以下、「八木」という)に対する電話盗聴未遂事件については、帝国リサーチ発行の「請求書」(乙ホ1の2)に「妙泉坊の件出張費」として、X宅電話盗聴、宣徳寺電話盗聴などと共に記載されている。

(2)大草ならびに小川は、この「妙泉坊の件」についての関与を認めた上で、この「妙泉坊の件」とは大石寺全体が電話盗聴されていないかどうかを調べるための調査であったと虚偽の主張を行なっている(乙ホ21「X裁判第17回口頭弁論調書」33頁、乙ホ17「X裁判第18回口頭弁論調書」21頁)。

(3)大草ならびに妙観講はこのような虚偽の主張をするのみならず、この妙泉坊に対する電話盗聴未遂事件を報じた「『地涌』選集」(報恩社発行)の内容が名誉毀損にあたるとして、本件訴訟を提訴した。

(4)原告側が名誉毀損であるとした請求原因の内容は、「『地涌』選集」が報じたX宅電話盗聴事件、宣徳寺電話盗聴事件、妙泉坊電話盗聴未遂事件の三つの電話盗聴事件について、その事実を覆い隠し、開き直って濫訴をなしたものである。

(5)したがって報恩社は、あくまでも本法廷において事件の真実性の主張を終始一貫、行なってきた。

2 「妙泉坊の件」を調査と判示するのならば辻の証人調べが不可欠

(1)報恩社への請求原因とされた「『地涌』選集」が報道した三つの電話盗聴事件のうち、未遂に終わった妙泉坊電話盗聴未遂事件については、X裁判、Y裁判において充分な尋問がなされていない。とりわけ辻について言えば、辻はX裁判においては、当時被告であった大草より証人申請がなされており、辻当人も「陳述書」(乙ホ19)を提出し、大石寺に電話盗聴器発見調査を行なう目的で赴いたことは認めている。

(2)しかし、その辻の大石寺訪問の目的が妙泉坊に対する電話盗聴であり、盗聴器探査が目的であるとする主張は、虚偽である。辻を証人として本法廷に呼び、技術的な裏付けをもった合理的な反対尋問を行なえば、原告らが電話盗聴実行犯である帝国リサーチ側と通謀し、虚偽の主張を行ない、「妙泉坊の件」が電話盗聴器の調査ではなく、電話盗聴であったことが、より明確になると考え、被告報恩社は辻の証人尋問を求めた。このような観点からして、もし仮に「妙泉坊の件」について事実認定するならば、辻の証人尋問は不可欠である。それをせずしてX裁判、Y裁判同様に「妙泉坊の件」が調査であると判示するのであれば、それは決して受け入れ難いことである。すなわち「妙泉坊の件」の真実(電話盗聴)を知る辻に対する証人調べをせずして、万が一にも「妙泉坊の件」が調査であるという誤審を重ねるようなことはあってはならないということである。

3 「妙泉坊の件」の真相を知るには電話盗聴及びその発見のための基礎知識が必要

(1)私は本法廷に「陳述書」とそれに加えて「大石寺周辺主要電話配線図」(乙ホ127)を提出し、「妙泉坊の件」が電話盗聴器探査を目的としたものであれば、DE間の調査が不可欠である旨を述べた。すなわちDE間を調査していないが故に辻が大石寺を訪れた目的は妙泉坊の電話盗聴であると主張した。

① DE間には大石寺の代表電話回線が設置されている。この代表電話回線においては法主である阿部日顕、大石寺役僧、日蓮正宗役僧、塔中坊役僧に対して外部から架電された場合には、その通話の音声の信号電流が流れている。つまり代表電話回線にかかってきた重要な会話を、DE間において盗聴することが可能。

② DE間には法主である阿部日顕や大石寺理事などの役僧、日蓮正宗宗務院各部署の直通回線、各塔中坊の住職の直通回線が通っている。誰の直通回線かということがわかれば、特定人物の電話会話を盗聴できる。ただし誰の直通回線かを特定することは電話回線が、事件当時、小川証言に、「大石寺の電話は内外線併せて600回線くらいありまして」(乙ホ17「X裁判第18回口頭弁論調書」21頁)とあることからして、ほぼ不可能に近い。ただし、ランダムに盗聴器を順次、設置し、重要情報を得ることのできる直通回線を結果的に掌握し、常時、重要情報を得ることは可能である。

③ 大石寺の法主・阿部日顕が居住している大奥、内事部、宗務院、主な役僧の電話端末器(電話機)より、電話がかけられた場合、その電話機が直通、内線扱いの別に関わらずDE間の電話回線を使用することになる。すなわちDE間に盗聴器を仕掛ければ、阿部日顕以下の重要な電話の盗聴が可能である。

④ これら①②③の事情は、盗聴器の設置、発見を仕事とする帝国リサーチの辻が現地の配線状況を見れば一目瞭然である。まして小川は、辻の調査状況について、以下のように供述している。

「次に交換機から外部に接続する線(外線)は、当然NTTの電話回線に接続するので、その接続するところの電柱付近を調査することが重要である旨を告げました。

その電柱は、宗務院の西玄関脇の警備詰所の裏にあり、調査員がこの電柱に上がり調査をしたのであります。また、この電柱は宗務院の窓からよく見えるところにあり、当日の調査の様子を見た宗務院の役僧の方も何人かおります。渡邉氏も、陳述書で、庶務部長に見られた旨(乙ハ1、183頁)述べております。

この電柱の調査は、一番重要なところで、盗聴されているとすれば、この電柱付近が危ないと思われたので念入りに調査を頼んだのであります。

結局、大石寺の電話盗聴はなかったとのことでありましたが、もし渡邉氏が言うように、盗聴が目的できているのであれば、大勢の人から見られる電柱の上で、しかも白昼堂々と盗聴器を取り付けていたならば、後にそれを発見された時、全て私の責任となってしまうではありませんか。現に、この調査の時に、宗務院から『電柱に上っている者がいる』との問い合わせもありました。

それから、電話盗聴の調査の途中で、私は、2名と別れて、内事部に戻りました。確かな記憶はありませんが、別れた理由は、もう少し電柱や配線を見ておきたい、とのことであったと思います」(乙ホ16「X裁判小川陳述書」15頁)

辻が「宗務院の西玄関脇の警備詰所の裏」の「電柱に上がり調査をした」のなら、その配線の延長線上にあるDE間を調査しないはずがない。電話盗聴器を発見するには、盗聴器の仕掛けられやすいDE間の端子函(ブラックボックス)約20の内部を開け視認する必要がある。

⑤ 辻は、大草が認めているだけでも平成2年6月と9月の2回にわたり、妙観講本部が電話盗聴されているかどうかを探査している。辻はこの時、電柱の端子函(ブラックボックス)内で妙観講の電話回線が隣のマンションの電話回線に結線され、隣のマンションの端子函(MDF盤)の中で妙観講本部の会話が自由に聞けることを発見している。この辻の問題意識からすれば、辻が電話盗聴されているかどうかを調べるにあたり、端子函(ブラックボックス)をことごとく開けることは不可欠の行為である。

したがって、大石寺を訪れた辻は大石寺の主要な回線が通っているDE間(乙ホ127)にある20前後の端子函(ブラックボックス)の内部を開け、その結線状況と盗聴器の有無を調べる必要がある。しかし辻はそれを行なっていない。

なおDE間の調査の場合、その端子函を開ける権利を有するのはNTT及びNTTから許可を受けた指定業者のみである。だが実際には、過去に妙観講本部の電話盗聴器探査において辻は勝手にNTT所轄の端子函を開け、さらに立ち入ることのできない隣接マンションに入り、端子函(MDF盤)を開け、そこにイヤホン端子を接続して音声信号電流を拾い上げ、その会話を聞き、次のように言っている。

「平成2年6月21日、12時20分、妙観講本部内にて使用中電話の会話内容を傍受しています」(乙ホ49「ビデオテープの概要」2頁)

この辻の調査方法からすればDE間の調査が違法であったとしても、必ずDE間の端子函の内部を開け、結線がなされていないか、盗聴器がついていないか視認を行なったはずである。

⑥ だが小川の証言によれば、辻が行なったのは「西玄関脇の警備詰所の裏」の「電柱」のみである。この「電柱」だけ調べても、大石寺全体が電話盗聴がされているかどうかの危惧を払拭することはできない。

また、もし仮にこのような行為を辻がとったとするならば、部外者である辻が大石寺内で動くことにつき、小川が大石寺の関係者に盗聴器探査をするための業者が来ていることを事前に通知するためのカムフラージュであったと言うことができる。なお、辻が大石寺内において行動するためには、大石寺警備担当の小川の了解がなくては行ない得ないことを見逃すべきではない。それは小川の「陳述書」(前出、引用部分)においても確認される。

⑦ DE間を辻が調査していないのは、辻の大石寺を訪れたことが、大石寺全体、あるいは特定回線が盗聴されているという危惧に基づきなされたものでないことを示している。

⑧ また辻が大石寺全体の盗聴を目的に訪れたと仮定しても、辻は回線特定は難しいが、盗聴器の設置自体はやさしいDE間の電柱に盗聴器設置作業を行なっていない。よって辻の大石寺を訪れた目的が、特定回線の盗聴器設置にあったと結論することができる。

⑨ すなわち辻は、渡邉が自供したように妙泉坊という特定坊の住職使用の直通電話回線への盗聴器設置を試みたが、盗聴器の設置が不可能で未遂に終わったことがわかる。

(2)私は6月29日の第20回口頭弁論において、原告側代理人がその反対尋問に際し大石寺周辺の電話配線状況について調査したことについて、

「大石寺の現地をちょっといろいろ調べられたということだけれども、それだけでは渡邉さんが大草さんに対して深い恨み、強い恨みを抱いていて、平成3年当時のことについて虚偽を述べるかもしれないと。それだけでそういう恐れを拭うに足りると思ったんですか」(第20回「口頭弁論調書」39頁)

と述べたことに対し、私は猛反発し、

「大石寺のD、E間の配線、この内容とそして盗聴の技術、そういうものを見れば、明らかに特定坊に対する盗聴行為以外にないんですよ。これは技術的にもし説明しろということだったらいくらでもしますよ。そういうことを分からないことを利用して、こういうふうな不当訴訟を起こしてきてる。そういうことが許せないっていう思いですよ。そういう物理的な、科学的な、技術的な無知に対して、つけ入る、あるいは大石寺の規模が妙泉坊1つにしても弁護士会館1つにあたる。150万坪以上のそういう霞が関の官庁街一帯を含むだけの大きさにあると、そういうものを抜きにして判決が行われてる。そういうことについて私は情けないという思いがします」(同)

と述べた。しかし原告代理人はそれに対し、なんら有効な反対尋問をなし得なかった。

(著者注 大石寺と霞が関の規模の比較については頁304、305、306、307を参照)

(3)以上のように「陳述書」(乙ホ128)及び「大石寺周辺主要電話配線図」(乙ホ127)、そして私の口頭弁論の様子からして、本法廷の裁判官が「妙泉坊の件」について電話盗聴未遂であるとの心証を確たるものであるとされたと判断する。

(4)そのことは大草や「交渉」「通謀」している帝国リサーチの福田のみならず、妙観講の指導教師である理境坊住職・小川も、X裁判、Y裁判において偽証を行ない、電話盗聴の「真の依頼者」を隠すことに腐心していたことを示すものと言える。(「同」一八頁)

◆大石寺の主要電話回線「58局」が不通になった

大石寺の電話回線は、その市内局番が「58」のものが大半である。大石寺の警備担当理事である理境坊住職・小川は、X訴訟において「電話盗聴器探査」の支払いについて、何年も経ていながら、いまだ未払いであるなどと不合理な証言をした。そのうえ、大石寺理事会の決定で盗聴器探査が行なわれたなどという権威づけをしながら、その決定をするきっかけとなった出来事として、大石寺で大規模な電話不通事故があったと述べた。小川はウソつきのうえに電気に関する基礎知識が欠如している。〝無知は罪〟というが、小川の場合、〝無知は無恥〟なのである。法衣は恥とウソを隠す。

一方大草は、山梨?長野にわたり一日で四箇所の電話盗聴器調査を(株)帝国リサーチにしてもらったが、その金額は五万円だったと言って、大石寺の電話盗聴器調査が五万円であることの正当さをX訴訟において主張していた。しかし、(株)報恩社の社員がその行程を自動車で実際に走ってみたところ、東京を早朝に出発しても夕方まで東京に戻ってくることができなかった。これを受けて(株)報恩社は、電話盗聴器の探査に費やす時間がないことを示す証拠を東京地裁に提出した。

大草がこのようにすぐに底が割れる主張をしたのは、「妙泉坊の件」が大石寺における電話盗聴器探査で、その費用が五万円であることが一般的な相場であると主張したかったからである。しかし大草も、このように述べたうえで、「妙泉坊の件」の支払いをしていないと証言した。

小川、大草ともに「妙泉坊の件」については距離を置こうとし、しかも、その一方で妙泉坊についての調査費五万円は一般的な相場であると印象づけようとした。小川、大草ともに「妙泉坊の件」に関する証言は信用に値しない。

結局、「妙泉坊の件」で真実を述べていたのは、渡辺だけであったと結論される。この「陳述書」の「第3」は、辻を証人として呼び出す理由となる核心部分となるので、読者の方々はここまで裁判文書を読んで、相当疲れていると思われるが、いまひとつ気を取り直して集中力を高めて読んでいただきたい。

ただし、この「陳述書」は、この一連の電話盗聴事件並びにそれに関わる事実を、A期、B期にわたって書いた一四万一四二六字に及ぶ「陳述書」の約三分の一の分量に過ぎない。それを心したうえで、ぜひとも読みきっていただきたい。

4 平成3年当時の電話盗聴技術及びその発見手段の概要

(1)

① 大石寺の警備担当理事で、原告妙観講の指導教師である理境坊住職・小川只道は、「妙泉坊の件」(請求金額5万円)つまり大石寺の電話盗聴器発見調査を帝国リサーチに依頼したのは次のような理由であったと証言している。

「大石寺の電話に雑音が入るようになって、一回、58局がばたんと落ちてしまったことがあるんですね。そういうこともありまして、盗聴の疑いが濃くなってきまして、そういうことで一度調査をしたほうがいいんではないかと八木主任理事に相談しまして、行ったわけであります」(乙ホ17「X裁判第18回口頭弁論調書」7頁)

② さらに小川は、この事故を受けて、大石寺理事会において帝国リサーチに依頼することが正式に決定されたとし、以下のように証言している。

「盗聴器探査にいたるまでには、やはり上司の主任理事また理事の皆さんに諮ってやるということを決定して、私がその警備の担当だったもんですから、私が実際にお願いしたということです」(同28頁)

この「58局」すべてが使えなくなったという大規模な事故は、いつ、どのように復旧されたのかが明確にされておらず、小川は電話に入っていたという雑音についてのみ、

「自然に消えました」(同35頁)

と述べている。

③ このような電気系統の事故においては、原因が究明されずに復旧がなされることはない。したがって、もし仮に小川の言うような事故が起きたとするならば、原因がわかり、それに相応した対処がなされてこそ、大石寺の電話回線は不通状態から復旧したと言えるのである。

④ もし、仮にその事故の原因が電話盗聴器が設置されたことによるものならば、その電話盗聴器は事故の時に発見され、撤去されていなければならない。

⑤ これは自明の理であるが、電話盗聴器の設置が原因で「58局」すべてが「ばたんと落ちて」不通になったのならば、その電話盗聴器が撤去されない限りは、その後においても不法に設置された電話盗聴器を原因として「58局」すべてが不通になるという状態が継続されることになる。

⑥ 小川の証言で述べられた大石寺の「58局」が不通になったという事態と電話盗聴器との因果関係について記述してきたが、電話盗聴器は微細な電流を電話線からとるという仕組みになっているのであるから、その電話盗聴器が設置されたことによって電話が不通になるという事態が起きたとしても、それはその盗聴器が仕掛けられた電話回線1回線においてのみ起こるものである。しかもその「不通」の状態は、電話盗聴器が電話線に対して直列に設置された場合においてのみ起こりうることなのである。

⑦ 多くの電話盗聴器は、電話を使用する者が受話器を取り上げることにより、電話線の電圧が急激に変化を起こすことに反応し、それによって電話盗聴器が起動し電波を発信する仕組みになっている。また、多くの電話盗聴器は電話線に対して並列に接続されることが多い。それは電話盗聴器内部の故障が起きたとしても、並列接続にしておけば電話線の通電状況には何ら支障はなく、通話者は通常に会話することができ盗聴の事実に気づかない。直列接続の場合は、電話盗聴器が故障した際に、断線したのと同じ症状をきたし、通話が不可能になり、修復にあたった業者に盗聴器は必ず発見される。

したがって、電話盗聴器の設置によって大石寺内の「58局」が不通になったという事態は、電話盗聴器の設置などという、1回線に対する工作によって惹起する事件ではないのである。

⑧ 仮に当時、「58局」が不通となる事態が起こっており、大石寺内に常駐していた電話専門業者である静岡電話工業が、その調査を行ない、事情説明をしたとしても、決して電話盗聴器によって起こった事件だとは説明しないはずである。小川の言うような大石寺に引き込まれた「58局」のすべてが不通となる事態は、例えば電柱間に渡されている空中ケーブルがクレーン車などによって切断されるとか、あるいは地下ケーブルが工事のショベルカーなどによって断線させられるとか、あるいはNTT局内の大規模な故障でもなければ起こりえないのである。

⑨ 小川は「58局」が不通になったことにより電話盗聴を疑って帝国リサーチに調査を依頼したと証言しているが、これまで述べたように「58局」が不通になることと電話盗聴器の設置との間には、まったく因果関係がない。ということは、小川は素人的な思いつきによって、帝国リサーチを大石寺に呼んだ理由を作出し、帝国リサーチを大石寺に招き入れた行為の正当化を謀ったと言わざるを得ない。つまり小川は妙泉坊に対する電話盗聴のために、帝国リサーチの辻を大石寺に呼んだという真実を隠すために、大石寺に引き込まれた「58局」がすべて「ばたんと落ちて」不通となったのは電話盗聴器が仕掛けられている可能性があると判断されたから、帝国リサーチを大石寺に呼んだという子供だましの理由づけをしているに他ならないのである。

(2)それでは一般に、電話が盗聴されているとすると、どのような検査をどのような段階を踏んで行なうのであろうか。私も電話盗聴に対しては警戒をしているが、電話盗聴がなされているという疑いがあるとNTTに申立てを行なった場合は、以下のような手順でNTTが電話盗聴器の発見に努めてくれることを知っている。

通常、電話をかけていておかしい(声が途切れる、雑音が混入する、音声が低くなるなど)と思い、NTTへ盗聴器の発見に努めてくれるよう依頼した場合、依頼者に対しNTTでは通常、以下のような対応をする。

① まず、依頼者にNTT側はNTT故障係の「113」に電話するよう要請する。

② NTT側は、電話をかけてきた依頼者の電話番号に電話をかけ直し、依頼者を電話口に呼び出す。

③ 依頼者が受話器を取る。

④ この際に、NTT側は回線に流れている弱電流の電圧の上下、抵抗値、電流値を検査し異常がないか確かめる。

⑤ 上記④の検査で異常が認められないにもかかわらず、それでもおかしい場合は、依頼者の端末器(電話機)そのものをチェックする(NTT側は自社製品でない場合は、端末器を開けて調べることができないので、自社の別の端末を付け替えてみる)。

⑥ 上記⑤のチェックでもおかしい場合は、回線の絶縁不良、接触不良の可能性があるので、保安器、ブラックボックスを調べる。

しかし、電話端末器から電話局にいたる電話回線は通常、端子函においてNTT所有部分と電話契約者の所有部分とに明確に区別されているため、電話機自体がNTTの所有であるならば電話機自体も調査してくれるが、NTTの所有でなければNTTの所有となっている電話機に取り替えての調査になるため、通常使用している電話機自体の調査は行なわれない。

ともあれ、大石寺において電話盗聴器の探査を行なう場合は、NTT及び静岡電話工業の立会いなくしては、決して調査を行なうことができない。すなわちNTTの所有に関わる部分についてNTT職員やNTTから委託を受けた専門業者以外の者が端子函を開け、回線に触れることは違法行為なのである。

(3)

① 大石寺の場合は、管理委託契約を結び大石寺に常駐させている静岡電話工業の社員がいるのであるから、NTTの所有箇所について勝手に探偵会社を入れて回線を調べたり、端子函を開けるという行為が違法であることは元より充分承知していたはずであり、この電話盗聴器探査を静岡電話工業並びにNTTが知ったならば、その調査自体が違法行為であるとして、決して認めなかったはずである。

② また、辻の「陳述書」(乙ホ19)を見る限りにおいて、辻が「電気通信設備工事担任者アナログ2級」などの電話回線工事に関する免許を持っているという記載もないことから、大石寺内の電話回線に触れることも違法である。

③ よって「58局」が一斉に不通になったという重大な事態において、一探偵会社を呼び、それも1人が1日でもってその調査を行なうということについて、大石寺に常駐する電話専門業者・静岡電話工業が納得するはずもない。かつ、小川は大石寺の広さについて30万坪と供述(乙ホ17「X裁判第18回口頭弁論調書」43頁)しているが、これは間違った供述である。私は、昭和48年に細井日達管長等が農地法違反で富士宮署に告発された際、富士宮市の地元調査に入ったが、この時、農家を営んでいる人の借名をなし、大石寺が所有していた農地法違反の土地だけで約150万坪あった。この約150万坪の多くの土地は正本堂建設用地であった。このことから鑑み、旧来の大石寺所有地と合わせれば大石寺の土地面積は約200万坪と推定される。600という電話回線数(乙ホ17「X裁判第18回口頭弁論調書」21頁)については、大石寺の役僧であれば常識的に知っているのであるから、大石寺の理事会において、帝国リサーチの社員1名が1日調査をすることによって、電話盗聴器探査ができるなどということを会議決定することはありえないのである。

④ もし、理事会決定がかりそめにも行なわれていたのであれば、それはX裁判において被告であった宗教法人・日蓮正宗、同大石寺、同理境坊、同宗法主・阿部日顕、小川、大草らにとって有利な証拠となるのであるから、この理事会の議事録はX裁判に際し証拠として提出されるのが当然である。この当然なされるべき証拠提出がなされなかったことは、そのような議事録が存在しないことを意味し、当然のことながら、「58局」が不通になったということもなかったことなのである。

(4)私は帝国リサーチの辻が大石寺を訪れた目的は、大石寺の塔中坊である妙泉坊に対する電話盗聴であったと、種々の客観的な情報から判断している。しかし、ここにおいてさらに、小川や大草並びに妙観講などの主張に沿って検討を加えていきたい。

「58局」が不通となり、電話盗聴器が設置されていることを疑い、大石寺理事会の決定を受け、帝国リサーチに調査を依頼する場合、どのようなことが最初に問題となるのであろうか。

帝国リサーチ側からすれば、調査対象となる大石寺の面積、電話回線数、電話端末器数、調査対象建物の延床面積などを聞き、電話盗聴器発見のためには一斉検査が必要なのであるから、調査対象規模に見合った人員確保をする必要がある。

しかし、「妙泉坊の件」において、そのようなことが行なわれた様子は一切ない。小川も大草も帝国リサーチの福田も一切そのようなことは証言していないし、辻も事前の打ち合わせについて詳述していないのみならず、調査方法についてすら、一切言及していない。

譬え話になるが、大石寺の水道管のどこかで漏水が起こっていることを発見しようとすると、途方もない人員と日数が必要となることが容易に想像される。しかし、水道管のどこかに穴をあけ、漏水を起こすだけなら、1人が1日、大石寺に行けば済むことである。

(5)

① 大石寺において行なわれた「妙泉坊の件」が、電話盗聴なのか、それとも電話盗聴器発見調査なのかを判断するためには、電話盗聴器、電話機、電話配線についてのある程度の知識が必要である。しかし、裁判所にその知識がないことによって、これまで誤判が重ねられてきた。それのみならず、電話盗聴器発見のための作業が、興信所等によってどの程度の相場でなされるのかという常識も持ち合わせていなかった。これもまた誤判の原因となった。

② 帝国リサーチの発行した「請求書」(乙ホ1の2)には、東京から富士宮の大石寺まで往復したにも関わらず、その実費請求も含め、5万円という請求が「妙泉坊の件出張費」の名目でなされている。「調査費」ではなく「出張費」と表記されていることに注目すべきである。未遂に終わったため、交通費等の実費請求がなされたと見るべきである。

③ 小川らは、大石寺の電話盗聴器発見のための調査であったというが、一般に一戸建て住宅の場合、平成2年当時における電話盗聴器探査の料金は「何十万円」であるという相場が、三才ブックス発行「盗聴のすべて 93」の「女子高生でもわかる盗聴器発見マニュアル」というコーナーに次のように書かれている。

「専門の業者に頼むと、盗聴器が仕掛けられているかどうか、すぐわかりますが、調査費用が何十万円もします」(乙ホ159)

また若干、時期がずれるが、平成7年発行の「盗聴のすべて 95年版」に収録されている「噂の盗聴発見業者5社に密着取材」という記事(乙95)によれば、各社の調査方法やおおまかな調査時間、そして調査対象の面積によって調査費用が変わることが記されている。

例えば「マイクロ電子販売」の記述には、

「調査にかかる時間は平均2時間程度ですが、発見できずにお客さんから『絶対あるはずだからもう一度調べてくれ』というときは5?6時間調べるときもあるそうです」(乙95、9頁)

という記載があるし、同記事の「ペガサス」という会社についての記述では、

「平均2時間、長いと8時間」(同11頁)

「追加料金 電話(1回線ごと)30,000円」(同)

と書かれている。

同記事の「東和通信社」の記述に添付された「検査・調査料金表」では調査対象面積「400坪」の調査料金は「520,000円」(同13頁)であるし、「日本ライトスタッフ」という会社では、東京から150キロ以内への交通費だけで「30,000円」(同17頁)を請求している。

④ 大石寺全体に対する電話盗聴器発見調査となれば、その調査対象面積は広大なものとなる。大石寺の敷地面積は約200万坪であり(乙ホ17「X裁判第18回口頭弁論調書」43頁)、建物の総延床面積は正確には不明であるが電話盗聴が行なわれた当時は、1万坪は下らないと思われる。「東和通信社」の記事(前出)に準じて考えれば、大石寺全体に対する調査費用は数千万円になると思われる。

また先の記事における「ペガサス」という会社の記述(前出)に準じて考えれば、大石寺の電話回線数は600回線である(乙ホ17「X裁判第18回口頭弁論調書」21頁)から、回線数に応じた追加料金だけで1800万円になる。

⑤ また一般住宅ですら電話盗聴器発見調査は「平均2時間、長いと8時間」かかるのであるから、辻一人が大石寺全体に対する調査を行なったとしたら、何十日も要することだろう。

⑥ このように費用の面から見ても、所用時間の面から見ても、辻が大石寺全体を調査したなどということはありえないことであり、妙泉坊に盗聴器を設置しようとしたが失敗したため、単に「出張費」だけを請求したものと思われる。それは「請求書」に請求項目として「妙泉坊の件出張費」と書かれていることとも一致する。

(6)

① 「私の長野県佐久市の自宅および会社、伊那の信盛寺、甲府・正光寺講頭の小池一彦氏の会社(以上は、甲府→伊那→佐久というルートで、同じ日に調べて廻ってもらいました)」(乙ホ41「X裁判大草陳述書」59頁)との大草供述を覆すために、報恩社において前出4箇所を1日で回り実施調査をした。その実施調査結果(乙ホ142、143)に基づき、報恩社側代理人が、本年7月27日の第21回口頭弁論において、大草を追及したところ以下のように証言した。

「あなたが回ったと言ってるところを実際に回ってみたんですけども、時間的に車で回るだけで12時間ぐらいかかるということが分かったんですけども。

えー、そんなことないでしょう。

実際、やってみたんですけども。

早朝からやってみて、こんななりますか。

実際、行った先で調査をすると日帰りでできないんじゃないかと。

戻ってくるまでの時間じゃないですか、これ。

意見があったら言っていただいたらいいんですけど、1日で回れるというご意見ですか。

回れると思いますよ。

しかも調査をしてもですか。

簡単な調査ですからね。

でも、 自宅の中に盗聴器が仕掛けられてるかどうかも調べるんでしょう。

いや、機械持っていって当てただけですよ。

電柱なんかも調べるんじゃないんですか。

いや、そんなことしてませんね。機械を持っていって、盗聴器がついてないかどうかチェックしただけです。

5分や10分じゃ済まないですよね。

要した時間は15分ぐらいだったんじゃないですかね。

1軒当たりですか。

ええ」(第21回「口頭弁論調書」41頁)

この大草の証言は、盗聴器の探査ということについて、一般人が無知であることを見込んで述べているに過ぎない。盗聴器の設置の有無を調べる調査が「15分ぐらい」でできるはずがない。したがって、「佐久市の自宅および会社」「伊那の信盛寺」「甲府・正光寺講頭の小池一彦氏の会社」の4箇所を盗聴器発見のために1日で帝国リサーチに回ってもらい、「1日5万円です」(乙ホ21「X裁判第17回口頭弁論調書」37頁)とする大草の供述は、「妙泉坊の件出張費」の5万円が妥当であるかのように装い、妙泉坊電話盗聴未遂事件を隠蔽しようとしているだけのことである。

② では以下、平成3年当時、どのような盗聴技術があったのかということを見ていきたい。そのため平成2年7月に発行された「盗聴のすべて4」(乙ホ161)を入手した。この本には当時の室内盗聴、電話盗聴の種類と方法が書かれていた。

(あ)室内の一般会話の録音についても有線方式と無線方式があり、電話盗聴についても有線式と無線式がある。

(い)室内会話盗聴においても電話機を利用したものがある。

(う)電話盗聴についても電気回線に接続し、同じ変圧器の別の電話回線から音声信号を取るという技術も当時すでにあった。

(え)また同書に掲載された「盗聴機器オールカタログ」(乙ホ161、162頁、163頁)によると、電話盗聴器が発信する電波を発見するための機械がスキャンする電波帯域が2GHz(2,000MHz)にまで及んでいることに驚きを禁じえない。一般に電話盗聴に使われる帯域は、76?90MHz(FM帯域)、あるいは135~155MHz(VHF帯域)、あるいは400MHz付近(UHF帯域)であるのに、2,000MHzまでの盗聴電波探査がなされているということは、この当時すでに、盗聴器より発する電波を探査されにくくするために、2,000MHzまで使う盗聴器が販売されていることを示している。

(お)なお、ここで盗聴器が販売されているという表現に抵抗があるかもしれないが、盗聴器は現に秋葉原などの専門店で販売されている。それは電波法に基づき、周波数帯別に、使用可能な電圧の範囲で発信することは合法であるからである。しかしながら、秋葉原などの専門店においては、海外などで使用するという建前で、違法な強力な電波を発信する盗聴器具が販売されているのが現状である。

(あ)小川は「58局」が一斉に不通になったことによって、大石寺の電話機に盗聴器が仕掛けられているのではないかとの疑いを持ち、帝国リサーチの辻にその調査を依頼したという。しかしながら電話盗聴器の調査は電話の端末器(一般的には電話機)の受話器を上げることなく行なうことは不可能である。なぜなら受話器を上げなければ、盗聴した信号波を乗せた搬送波(電波)が発信されないからである。したがって電話盗聴器発見調査は、電話の受話器を上げその電話の送話口に、ある一定の周波数を入れ、それが電波に変換され飛ばされている時に、その送話口から入れた周波数が信号波となっている電波を、盗聴発見器が拾うことにより盗聴がなされていることを知る。その調査対象となる電波帯域は、平成2年当時は76MHz程度から2,000MHzまであった。

(い)したがって、もし仮に大石寺全体の電話盗聴探査を行なうということになれば、大石寺には、当時600回線あったと小川が証言している(乙ホ17「X裁判第18回口頭弁論調書」21頁)のであるから、その回線に接続された全ての電話機の受話器を1つずつ持ち上げ、その送話口に、ある一定の周波数を入れ、周波数帯域を低周波から高周波に至るまでスキャンしながら、入れた周波数を信号化した電波を探すという原理を持つ電話盗聴探査器を持って、1台ずつ調査していく必要がある。

(う)このように電話機の受話器を上げて調査しなければならないのは、前述したように、電話の受話器を上げ電流が変化したときに電波が初めて発信され、電話機に受話器が置かれているときには電波が発信されないという電話盗聴器の特性によるものである。

電話盗聴器がこのような特性を持つのは、電波が発信されれば、それを傍受される可能性があり、電話盗聴器が発見される可能性が高まる。また、ラジオに雑音が乗ったり、テレビが余分な電波を拾うことにより、テレビ画面の画像が乱れるというような電波障害が起こり、電話盗聴器が発見される確率が高まるので、それを防ぐために、電話盗聴器は受話器をあげたときにのみ起動するのである。

(え)この受話器を上げた時に発する電波を傍受したら、機器内部、回線を徹底的に視認し、盗聴器を発見する作業をすることになる。

(お)電話盗聴にはこのような無線を利用したもの以外に、電灯線などの有線を利用してその信号波を流し、他所でそれを拾い、音声に復元するという方法もある。よって、厳密に電話盗聴器を発見するためには、電話端末機の1つ1つの内部を開けて盗聴器が設置されていないかということを見る必要があり、さらには電話配線のどこかで電灯線に接続されている恐れもあるのだから、電話回線ことごとくを点検する必要がある。そうなれば、天井裏はおろか配管の中まで徹底して視認し調べる必要が出てくるのである。

(か)室内盗聴器発見は除き、電話盗聴器の発見のみに限ってみても、有線、無線の両方式の発見に努める必要がある。

そして大石寺の規模も考慮すると、辻が1人で、たった1日でもって大石寺の電話盗聴器探査を行なうことは絶対にできない。しかも、この電話盗聴器探査に、大石寺内の塔中坊の住職が小川を除いて誰も立ち会っていないことも重要な事実である。さらにまた、各塔中坊を辻が訪ねていないことも決して見逃してはならない。もし、していれば、小川、大草の供述で必ず出てくる事実である。

大石寺従業員、塔中坊住職、家族が立ち会わなければ、電話機の受話器をあげることができず電話盗聴器発見のための初歩的な検査すらできない。

④ したがって、このように室内会話盗聴や電話盗聴において多岐にわたる方法があることを知っている者ならば、大草が盗聴器探査は「簡単な調査ですからね」(第21回「口頭弁論調書」41頁)「要した時間は15分ぐらい」(同)などと証言したことは、大嘘と断ずることができる。

この時、大草が電話盗聴器探査が短時間でできることを強弁したのは、大草がX裁判において、

「私の長野県佐久市の自宅および会社、伊那の信盛寺、甲府・正光寺講頭の小池一彦氏の会社(以上は、甲府→伊那→佐久というルートで、同じ日に調べて廻ってもらいました)」(乙ホ41「X裁判大草陳述書」59頁)

と供述したことに対し、帝国リサーチのある新宿から、甲府、伊那、佐久の各都市を訪問し、再び新宿に戻ってくるだけで、朝6時から夜7時までかかったという報恩社側の実施調査(乙ホ142、143)にあわてふためき、1日でその4箇所を調査したという嘘を糊塗するためであった。

大草はこのように、実際にはありえない盗聴器探査の嘘を次々と述べている。「妙泉坊の件出張費」についての、大石寺の現実を無視した大草の強弁が何を意味しているかと言えば、「妙泉坊の件」が電話盗聴器探査ではなく、電話盗聴未遂であり、そのための「出張費」が帝国リサーチからの「請求書」(乙ホ1の2)に記載された事実をただひたすら隠すためである。

5 盗聴知識のない渡邉茂夫が盗聴不可能について合理的な説明

(1)私は、平成9年8月21日、同年9月8日、平成11年9月3日の3回にわたって渡邉に対する取材を行なったが、渡邉は電話盗聴についての知識をほとんど持ち合わせていなかった。であるにもかかわらず、渡邉は妙泉坊に関する電話盗聴ができなかった事情を第2回目の取材(平成9年9月8日)に際し、以下のように述べた。

「妙泉坊については、盗聴しようとしたがダメだったので、実費だけを請求した」(乙ホ12「報告書」12頁)

「辻が、『電柱がない』『電話回線が地下を通っているようだ』と言った。辻がマンホールにもぐった。

辻は『大石寺の電話回線は地下で束ねてある。盗聴器を仕掛けたら一発でばれる。どれが妙泉坊の回線か特定できない。妙泉坊に直で仕掛けると危ない』と言った。

理境坊に戻る。辻は車で待つ。理境坊の庫裏で自分が小川に盗聴不可能の事情を報告」(乙ホ12「報告書」13頁)

(2)渡邉は妙泉坊が盗聴できなかった理由として、電話回線が妙泉坊から直接地下ケーブルに接続されていることを挙げた。電話回線が地下回線になっていることを辻より聞いたと渡邉は述べた。これは極めて合理的な理由説明である。電話盗聴器を設置しても、盗聴電波の発信に不可欠なアンテナとしての電話線が確保できず、ほとんど傍受できない微弱な電波しか発することができないからである。

(3)また辻は渡邉に対し妙泉坊が電話盗聴できない理由として、地下ケーブルの中から妙泉坊の回線を特定できえないと述べたと話した。渡邉は、電話回線が地下でこのような形状になっていることを知るはずがない。渡邉が述べているようにマンホールに入った辻がそのことを説明したという渡邉の私に対する取材時の話は真実であるとしか考えようがない。またX裁判、Y裁判、本件裁判においても、日蓮正宗、大石寺、理境坊、阿部日顕、小川、大草から妙泉坊の電話回線が地下溝に入っている事実はないという反論もなかった。これらのことからして妙泉坊の電話回線が建物からすぐさま地下溝の中で束ねられているということは、事実であるということがわかる。

(4)さらに渡邉は取材時、私に対して妙泉坊の電話回線がまず特定することができないとし、その上で「妙泉坊に直で仕掛けると危ない」と述べている。このこともまた重要な事実関係である。

① もし妙泉坊の電話回線が特定できたとしても別の電話回線に接続し親子電話のような仕組みで盗聴する、あるいはまた電流誘導式のテープレコーダーを電話回線に直付けするしかない。

② このいずれの場合も、盗聴するためにつけた回線の中に抵抗を入れ、通話回線の電圧低下を阻む必要がある。それをしなければ通話者が音声が小さくなったことにより電話の異常を感じることになる。したがって、電流誘導式のテープレコーダーを電話回線に直付けした場合もまた、補助電源を必要とし、定期的にその電源の補充が必要となる。

(5)別の電話回線を接続する、あるいはテープレコーダーを接続するといういずれの場合も、まず電話回線の特定をしなければならないのだが、それは盗聴する者の一人が妙泉坊内に入るか妙泉坊の壁面などにおいて露出している電話回線にヘッドホン(またはイヤホン)とマイクなどを直付けして、もう一人の共犯者が地下ケーブルの電話回線を一つ一つ拾い上げながら先の妙泉坊の電話回線にヘッドホン(またはイヤホン)とマイクをつけた仲間の者と会話をしながら特定するしかない。あるいはまた、その電話回線が直通回線である場合のみだが、NTT施設局内の係員と、ヘッドホン(またはイヤホン)とマイクをつけた盗聴者が正規の業者を装い話し合い電話回線を特定するしかない。

(6)以上のような事実関係を把握することによって、マンホール内において回線を特定し盗聴することは「不可能」という結論が導き出されるのであり、そのことは電話盗聴の専門家である辻しか判断できないことである。

(7)だからこそ辻は「妙泉坊に直で仕掛ける」という選択肢も考えたと思われる。しかしこれは妙泉坊の回線がすぐさま地下に潜っており建物外壁部の配線露出部が限られていることから、そこに盗聴器を設置すれば発見されやすい、だから「危ない」と結論し電話盗聴実行を中断したのである。これもまた電話盗聴器設置を専門とする辻ならではの結論と言える。

(8)妙泉坊が盗聴できなかったという因果関係について、渡邉は物理的知識、あるいは電話盗聴に対する知識を持ち合わせていないにも関わらず、私の取材に際し妙泉坊電話盗聴が不可能に終わった理由を端的に説明した。このことは渡邉が妙泉坊盗聴未遂事件をデッチ上げていないことを示すものである。(「同」二四頁)

◆X訴訟高裁判決の誤りを正す

裁判官、それも高等裁判所の裁判官であっても、稚拙な間違いをする。また最初から一審を支持するという結論を抱き、その予断に基づいて事実認定を述べるというケースもある。

その好例がX訴訟の高裁判決であった。しかしながら、X訴訟の高裁判決が陥った誤りは、本件の本質を見極めなければ誰しもが陥りやすいことであるともいえる。私はX訴訟高裁判決の矛盾を徹底して書くことによって、逆にそこに潜在していた真実を明確にした。このことにより本件訴訟が先行二訴訟、それも最高裁判決まで確定したものにしばられないようにしたのだった。

以下の箇所の陳述により、本件訴訟を担当した裁判官は先行二訴訟に安易に追従する危険さを充分、感じたことと思う。

第4 東京高裁判決を帝国リサーチ発行の「請求書」並びにファックス文書から分析する

1 X裁判高裁判決が描く不可解な渡邉像

(1)「妙泉坊の件」とは、大草や小川によれば、大石寺理事会が大石寺が電話盗聴されているのではないかと危惧して決定し、帝国リサーチに依頼した案件である。そして、小川が大草を通じて帝国リサーチに依頼したことは、大草及び小川らが主張してきたことである(乙ホ21「X裁判第17回口頭弁論調書」32頁、乙ホ17「X裁判第18回口頭弁論調書」26頁)。しかし、「妙泉坊の件」が電話盗聴実行犯である帝国リサーチが発行した「請求書」(乙ホ1の2)において、明らかなる電話盗聴である「Xの件」「宣徳寺、秋元広学の件」と共に記載されていることからして、この事件が他の電話盗聴事件と同一の性格を持つものであることは疑いがない。すなわち、帝国リサーチより渡邉に宛てて出されたファックスに、

「この件(2,354,580円)の請求書分は、本山に出すので正規の料金で請求書を作成して欲しいとのことで、前回お渡ししましたが、勿論、そちら様から頂く時は、45%引きです」(乙ホ2)

と記載されているように、真の依頼者は「本山」こと大石寺である。

(2)しかし、X裁判における東京高裁判決は、次のように判示している。

「甲34 の請求書に記載された『妙泉坊の件』が、同坊ないしその住職である八木信瑩に対して盗聴をしようとした事実に関するものであることを認めるに足りる証拠はない。確かに、甲34の請求書には、本件電話盗聴である『Xの件』の記載とともに『妙泉坊の件』との記載があるが、福田政の証言によれば、『妙泉坊の件』についても被控訴人帝国リサーチに依頼したのが被控訴人渡邉であった事実が認められるのであって、これによれば、被控訴人帝国リサーチとしては、『Xの件』も『妙泉坊の件』も被控訴人渡邉からの依頼であると認識したことから、両者を被控訴人渡邉宛の請求書に記載したということも十分考えられるところであるから、甲34において本件電話盗聴と『妙泉坊の件』が同一の請求書に記載されていることをもって、直ちに、本件電話盗聴が被控訴人大石寺の依頼に基づいて行われたということはできない」(甲24「X裁判東京高裁判決文」17頁)

(3)かてて加えてこのX裁判における東京高裁の判決は、社会通念に反するものである。社会通念上、一枚の請求書に記載された案件についての支払い主が一人であることは自明であるからである。X裁判における東京高裁の判決は、この社会的な常識を覆し、乙ホ1の2が1枚の「請求書」であるにもかかわらず、別々の者に請求されるべき事項が記載されていてもおかしくないと判示しているのである。しかもその錯誤は依頼者が同じことによる錯誤だという。

(4)

① 小川や大草は「妙泉坊の件」を電話盗聴器の探査で、その費用の5万円は未払いのままであるとまで主張している(乙ホ21「X裁判第17回口頭弁論調書」32頁、同34頁、乙ホ18「X裁判第19回口頭弁論調書」1頁)。

しかし、「請求書」(乙ホ1の2)に記された「宣徳寺、秋元広学の件」は知らないと小川、大草共に主張する。仮に小川、大草の言い分が正しければ、渡邉は宣徳寺に対する電話盗聴を小川、大草に内緒にしていたことになる。そうなれば「請求書」(乙ホ1の2)を書いた帝国リサーチは、渡邉が極秘にしていた日蓮正宗末寺の宣徳寺への電話盗聴費用と、渡邉が小川、大草より依頼された日蓮正宗総本山大石寺への盗聴器探査費用を1通の「請求書」に書いたことになる。調査依頼者の機微に触れたサービスを生業とする探偵会社が、このような誤記をするはずがない。

② もし仮に誤記したとしても、渡邉は帝国リサーチに大石寺宛の「請求書」を改めて書き直させることとなり、それに基づき大石寺は5万円の支払いをする。

③ その場合、ファックス文書(乙ホ2)の存在が説明できない。

④ よって小川、大草の主張は成立しないのみならず、東京高裁判決も誤っていることになる。

⑤ なお、小川、大草が「妙泉坊の件」の支払いから逃げるのは、「妙泉坊の件出張費」と書かれた「請求書」(乙ホ1の2)に電話盗聴事件として録音テープもあり揺るぎのない「Xの件」「宣徳寺、秋元広学の件」が記載されているからである。

(5)X裁判高裁判決は、以下のようなことからも不自然であるといえる。つまり、この東京高裁判決によれば渡邉は、やり手の人物としか言いようがないということである。すなわち渡邉は、日蓮正宗の総本山大石寺に対しては電話盗聴器探査を行ない、その一方においては同じ日蓮正宗の渉外部長という役僧である秋元広学が住職を務める宣徳寺に対する敵対的な行動である電話盗聴をなしているということになる。福田が東京高裁判決に基づくような渡邉像を持っているならば、福田から渡邉について、「酒と女にだらしない、『エセ宗教家』であり、信用できない人物」(乙ホ22「X裁判陳述書」4頁)「精神的にも少し変」(同5頁)「調査費の中から金をくすねることでも考えているのだろう」(同6頁)といったような表現が出ようはずがない。福田が渡邉を小物扱いする陰においては、同じ日蓮正宗に対して電話盗聴器探査と電話盗聴という真反対の行為を行ない、さらには妙観講講頭の大草の目を盗んで末寺(宣徳寺)や敵対的人物(X)に対する電話盗聴をしていたということになり、このようなことをしでかせる人物について、福田が小物扱いしたような表現をしたり、またこのような危ない橋を渡っている人物に対する「請求書」(乙ホ1の2)の作成において、「Xの件」「宣徳寺、秋元広学の件」と「妙泉坊の件出張費」を併記し請求するなどという可能性は万に一つもない。

2 X裁判東京高裁判決は福田証言の誤読に由来

(1)

① X裁判高裁判決は、大草と、X裁判の被告であった帝国リサーチの証人・福田の証言をよく読まず誤判したと言える。

「『3』番目に『妙泉坊の件出張費』とありますけれども、これはどんな調査だったか記憶がありますか。

それは盗聴の検査ではなかったでしょうか」(乙ハ16「X裁判第11回口頭弁論調書」30頁)

「じゃあここに書いてある、『渡辺から、誰かに見せるので盗聴を行ったような報告書と、それに見合うような請求書を作ってくれと頼まれました。』と書いてある、これは事実なんですか、事実じゃないんですか。

私が想像したんですね、そういうふうに。

頼まれましたと書いてあるんですよ。

頼まれたことは事実でございます。

じゃあ、渡辺から、だれかに見せるので盗聴を行ったような報告書と、それに見合うような報告書を作ってくれと頼まれたとは事実なんですか。

事実です」(同59頁)

「先ほど来、示されているインタビュー記事ですが、四段目の左側端のほう、ここに大草さんから盗聴されていないかどうかを調べてほしいということを頼まれて富士の理境坊とか東京の妙観講の建物などについて調査をしたという記事がありますが、このようなことをなさったことがあるのは間違いないんでしょうか。

はい」(同91頁)

「妙泉坊の件」及び「妙泉坊の件出張費」を記載した「請求書」(乙ホ1の2)に関する福田の証言は、X裁判の口頭弁論においてはこれらの3箇所にしかない。これらの福田証言は、単に請求書の作成を渡邉に依頼されたと述べているのみで、「妙泉坊の件」を渡邉から依頼されたとは述べていない。繰り返すが福田は請求書の作成は渡邉から頼まれたが、本件自体を渡邉から頼まれたとは述べていない。しかも福田は「妙泉坊」という言葉を発していないのである。

② 「福田政の証言によれば、『妙泉坊の件』についても被控訴人帝国リサーチに依頼したのが被控訴人渡邉であった事実が認められるのであって、これによれば、被控訴人帝国リサーチとしては、『Xの件』も『妙泉坊の件』も被控訴人渡邉からの依頼であると認識したことから、両者を被控訴人渡邉宛の請求書に記載したということも十分考えられる」

つまり東京高裁判決は本件の依頼をした者と請求書作成を依頼した者とを混同している。小川や大草の言い分からすれば、そもそも「妙泉坊」などといった固有名詞が帝国リサーチの「請求書」(乙ホ1の2)に記載されるはずがない。辻もまた妙泉坊の盗聴器探査をしたとは、「陳述書」(乙ホ19)に記載していない。したがって小川、大草、帝国リサーチ側の言い分が正しければ、「請求書」(乙ホ1の2)に「妙泉坊」という固有名詞が記載されるはずがない。同「請求書」に「妙泉坊の件出張費」と記載があることを唯一、合理的に説明しているのは、渡邉が私の取材時に述べた妙泉坊に対する電話盗聴未遂の顛末だけである。ともあれ、東京高裁判決は3つの福田証言を読み違え、その重大な過失の上に立ち、上記のように結論づけたことが誤審を原審判決に続き重ねた要因の一つであると言える。

③ この引用した3つの福田証言において注目すべきことは、福田が真の依頼者が渡邉の背後にいたことを認識していたことを前提に証言していることである。これを見逃してしまったことにより、X裁判高裁判決は取り返しのつかない過ちを犯したと言える。これらの福田証言と「この件(2,354,580円)の請求書分は、本山に出すので正規の料金で請求書を作成して欲しいとの事で、前回お渡し致しましたが、勿論、そちら様から頂く時は、45%引きです」という帝国リサーチの塩谷の発したファックス文書(乙ホ2)を併せて見るならば、この一連の電話盗聴の真の依頼者が誰であるかは明白であった。真の依頼者である阿部日顕が宗教的権威の象徴者であり、その意を受けた小川が日蓮正宗総本山大石寺の理事という高位な役僧であるということに恐れをなし、判決において関与を認定するのに臆病となり社会通念を無視し証言にもないことを記し、こじつけとしか言いようのない事実認定をしたことは、電話盗聴という悪事の真相を結果として隠蔽することとなった。

(2)

① X裁判の高裁判決は、帝国リサーチが「妙泉坊の件」を依頼したのが渡邉であるから、錯誤して渡邉宛の請求書に「妙泉坊の件出張費」を記載してしまった可能性について「十分考えられる」としているが、福田はかつて「慧妙」に掲載されたインタビューで次のように述べている。

「なお、大草さんからは、これまで関係先の電話が盗聴されていないか調べてほしい、と盗聴器を探し出す仕事を依頼されたことがあります。それで富士の理境坊とか、東京の妙観講の建物とか、長野や静岡等の会社とかお寺とか、一件あたり五万円前後で何ヶ所か調べさせてもらったことはありますよ」(乙ロ28「慧妙」平成8年2月1日付)

福田は「妙泉坊の件」の直接の依頼者が大草であることを、平成8年の段階においても、明確に記憶していたのである。

② ここに出てくる「理境坊」につき、大草は次のように述べている。

「このように帝国リサーチから妙泉坊調査の請求書が出ており、帝国リサーチの福田氏も妙泉坊調査をやったことを認めていますが、あなたとしては妙泉坊の調査をした記憶はないのですか。

いや、全くありません。

請求書が来て福田さんも認めているけど、あなたはない。

これは理境坊や大石寺も含めた調査を妙泉坊の件というふうに表記されていると思いますけれども、多分」(乙ホ21「X裁判第17回口頭弁論調書」33頁)

③ 福田が「慧妙」のインタビューについて答えた「富士の理境坊」に対する調査とは、「理境坊や大石寺も含めた調査」のことであり、そのことが「妙泉坊の件」と表記されていると思うと述べているのである。福田のインタビュー内容、大草の証言からしても、「妙泉坊」「理境坊」「大石寺」の調査依頼は、大草によってなされたものであることがわかる。ここで注意しなければならないのは、この大草の、「理境坊や大石寺も含めた調査」が「妙泉坊の件というふうに表記されている」ということにつき合理的な解釈をすることは不可能だということである。

(3)

① X裁判の高裁判決の事実認定が、重大な過ちを犯していることは、X裁判とY裁判における、「妙泉坊の件」に関する大草ならびに福田の供述を比較すれば、より明らかとなる。

大草はX裁判に提出した「陳述書」(乙ホ41)おいて、次のように述べていた。

「大石寺や大石寺役僧の電話が創価学会に盗聴されているのではないかとの疑いがあり、小川尊師と私と相談の結果、『妙観講が電話盗聴されているのを発見した帝国リサーチ社に盗聴探査を依頼しよう』ということとなり」(乙ホ41「X裁判大草陳述書」59頁)

「この件の連絡は、私が被告渡辺に対して行ない、被告渡辺が帝国リサーチの都合を確認して私に伝え、それを私が小川尊師に報告して日時等を決定」(同60頁)

だが、大草はY裁判における証言においては、福田への直接依頼者は自分であると述べ、重大な変遷をなした。

「帝国リサーチに依頼したのは、誰ですか。

それは私が依頼したのか、と思うんですが、ただ実際に行く時は道案内が必要ということで、渡邉が行ったと思いますけれど。

帝国リサーチに依頼したのは、あなたなんですね。

はい。電話で多分、私が依頼したんじゃないでしょうか」(乙ホ60「Y裁判第10回口頭弁論調書」73頁)

② 帝国リサーチの証人福田も、Y裁判においては以下のように供述している。

「あなたは前回の別件の裁判では、妙泉坊に盗聴の検査に行った、という話をされてませんか。

ああ、そうですか。したかもしれませんし、しないかもしれませんし。

そもそも、大石寺の塔中坊に盗聴器が取り付けられていないかどうかについて、大草さんかあなたに調査依頼がなかったですか。

よく覚えてません。あったかもしれません。

大草さんはあなたに、直接電話で依頼をした、と言ってるんですけれども、記憶にないですか。

はい。

全くないんですか。

いえ。ですから、私の方に何月何日そういう電話をいただいたという記憶がないんであって、お掛けになった方の方にあれば、私が受けたか、会社が受けたかですね。

大草さんは、あなたに直接電話したと言ってるんですよ。

ああ、そうですか。じゃあ、私が受けたのかもしれませんですね。

この盗聴検査の依頼主は誰だと話があったか覚えていますか。

そういうふうに聞かれると困るんですけれども、何年ごろですか。

平成3年10 月ころですよ、秋ごろ。

よく覚えていません」(乙ホ61『Y裁判第13回口頭弁論調書』12頁)

このように福田は「妙泉坊の件」につき、自分が大草より電話を受けた可能性を決して否定しなかった。

③ つまり、X裁判高裁判決は大草と福田が共謀して作出した虚構に惑わされ、福田証言すらも読み間違えた上で、安易に誤った判決を下してしまったのだといわざるを得ない。それにしてもX裁判の高裁判決が帝国リサーチ側の「請求書」作成につき、錯誤して記載したとまで解釈していることは、予断による事実に反する認定としか言いようがない。帝国リサーチの福田が錯誤していないことを、わざわざ錯誤した可能性があるとして事実認定するX裁判の高裁判決は到底、受け入れがたいものである。

3 これまでの判決は大石寺の規模に対する認識不足が誤判の誘因

(1)大草や、妙観講指導教師である小川らは、大石寺の規模、あるいは妙泉坊の配置、その大きさなどについて、X裁判、Y裁判における裁判官たちが、具体性をもって認識できていないことを奇貨として、辻の同寺来訪の目的が、電話盗聴器発見調査であったと言い、かつ「妙泉坊の件」についても、大石寺全体の調査だと言い張っている(乙ホ21「X裁判第17回口頭弁論調書」32頁、乙ホ17「X裁判第18回口頭弁論調書」26頁、乙ホ18「X裁判第19回口頭弁論調書」4頁)。

(2)大石寺全体の規模や塔中坊などの配置を知れば、大石寺全体の調査を「妙泉坊の件」などと書くことがありえないことは容易にわかるのに、大草や小川らは「妙泉坊の件」が大石寺全体の電話盗聴器発見調査であると強弁している。いつ底が割れるかもしれないこのような強弁を彼らがせざるを得ないのは、彼らが電話盗聴の犯人として切羽つまった心境にあったからである。

(3)本法廷の裁判官の理解を助けるために、同縮尺の霞ヶ関の官庁街の建物配置図(乙ホ154、155)と大石寺の建物配置図(乙ホ156、157)を別添するので是非とも判決において参考にしていただきたい。

(4)このような広さを持つ大石寺の電話盗聴器発見調査を、辻1人が、たった1日で行なえるはずがないことは、一目瞭然である。

(5)ただし、妙泉坊を訪れ、その電話盗聴が不可能であるとの結論を出すだけであれば、充分な時間と人員であると言うことができる。辻の同寺来訪の目的が、電話盗聴そのものであり、それが未遂に終わったことは、「請求書」(乙ホ1の2)に記載された「妙泉坊の件出張費」に関する請求金額が5万円であることをもっても、首肯されるところであろう。

4 誤審が悪事を隠蔽する危険性

もし本法廷が、原告らと帝国リサーチが電話盗聴を謀議して行ない、のち裁判においても「交渉」「通謀」したという認識がなく、原告と被告という当事者のみの尋問に終わり、大草と福田が通謀して行なった偽証の上に成り立ったX裁判の高裁判決に安易に立脚して判決をなすことがあれば、その結果、本来裁かれるべき原告側が不当な利益を得ることは目に見えていると言わざるを得ない。

東京高裁判決が誤判をなしていることは、ここまでの陳述によって明明白白となり、その一方で大草及び妙観講が濫訴をなしたことも充分、納得されたと考える。(「同」四〇頁)

◆妙観講の破廉恥な集団偽証

渡辺の人格を攻撃するために、X訴訟の被告であった大草は、渡辺から性的被害を受けたなどと書いた女性講員の「上申書」をX訴訟の法廷に提出した。また、男性講員も渡辺の人格攻撃を記した「上申書」を提出している。

しかしながら、それらの「上申書」の内容は、検証を経ることによって、その多くが虚偽であることが明らかとなった。さらにその「上申書」群は相互に矛盾し合い、原告大草の主張とも反するものがある。プライバシーに及ぶことなので、「別表①」「別表②」として裁判所に提出した内容を本書において公表することは控える。

本音を言おう。

プライバシーを守るというよりも、あまりにもエゲツなくて本書に掲載したくない。しかし、これらの「上申書」群が、どれほどいい加減であったかの事例を数例だけ紹介しておきたい。

「S・H」の場合??、昭和六十二年に「渡邉が私の他に3人以上の女性と関係をもち、又その一人にはやはり子供を生ませていたことがわか」ったなどと書き、「ショックを受け、渡邉がとんでもない変態男だとわか」ったと「上申書」で述べている。ところが、それから三年後の平成二年十月二十七日に行なわれた結婚式の写真がX裁判に提出された。その写真には、渡辺を中心にその左右に「S・H」本人と、その結婚式の新婦がそれぞれ仲良く渡辺と腕を組んで写っている姿が確認された。これにて「S・H」の「上申書」の信憑性はゼロとなった。

「K・K」の場合??、「K・K」は渡辺と肉体関係を持つ前、「エロ本やイチジク浣腸」を渡辺に買いに行かされたり、「他の女性と同じ布団で寝ていた」のを何度か目撃したと「上申書」に書いている。ところが、この「K・K」は、そんな渡辺と自宅やラブホテルで性交を重ねてきたと述べ、妙観講の講頭である大草に指導を受けたあとも同様の行為を行なってきたと書いている。ここまで書いていながら、

「私はまだ早い段階で発見していたので、深い傷をおわずにすみましたが、中には傷ついて退転してしまった方もいらっしゃると思います。本当にお気の毒に思います」

というのである。「本当かいな?!」と思うのは、著者だけではないだろう。

このような「上申書」を平気で裁判所に提出してくる妙観講員は、どこかがおかしい。このように品性がないうえに被害感情に欠けた「上申書」群が提出されて、渡辺の異常性が立証されようとした。そこでまた素朴な疑問が湧く。

そのように渡辺が異常な男であるならば、渡辺が〝法主〟によって認証された幹事になったり、妙観講の教学部長を務めていたことは、いったいどう理解すればよいのだろうか。

これらの「上申書」群のような渡辺の状況がうんざりするほど続いたあとで、渡辺を平成三年二月一日付で役職を解任したから、そのような人物に平成三年秋に行なわれた一連の電話盗聴事件などを依頼するはずがないと原告妙観講並びに大草側は主張するのである。

では、妙観講の場合、女性問題で本当に役職を解任されるのであろうか。講頭の大草本人も、いわゆる「J子の日記」の中で、「5月30日は、Kの結婚式.そして 私と講頭とのはじめての日」と書かれている箇所について、X裁判で被告渡辺代理人より、ここにいう「講頭」とは誰のことかと聞かれた際に、そこに書かれている「講頭」は自分であると認めていた。

宮本 一九九ページの五月三一日の部分を見てください。「5月30日は、Kの結婚式.そして 私と講頭とのはじめての日」うんぬんという記載がありますが、ここで言う講頭とは、あなたのことではないんでしょうか。

大草 そうでしょうね、私を指していると思います。

(X訴訟・第一六回・平成十二年十一月十三日「大草調書③」二六頁)

ところが、本件訴訟においては、同日記に書かれている「講頭」について聞かれ、

「妙観講の講頭は私ですけど、ここに書かれてるのがそうかどうかは分かりません」

(妙観講不当訴訟・第二一回・平成十七年七月二十七日「大草調書」七六頁)

と否認に転じた。これは自らが社会道徳的に極めてまずいことをしているとの認識があるゆえの変遷である。

それでは、話を平成三年二月一日の渡辺の役職解任直前の様子について記した大草の「陳述書」を見てみよう。

「HYさんは、被告渡辺の過去の悪行のことも知らず、被告渡辺を信じて、不仲だったご主人と離婚してまで被告渡辺と再婚しようと思っていました。

ここまでHYさんを思い詰めさせる一方で被告渡辺は、別の女子(SY子)とも関係を持っていたのです。私は、HYさんに、支部長の佐々木より聞いた事実を告げると共に、被告渡辺の過去の悪行のことも全て伝えました。

部屋の中に、HYさんの泣き叫ぶ悲痛な声が響き、私は、申し訳なさ、いたたまれなさで涙が止まらず、自らの被告渡辺に対する監督不行き届きを、HYさんに手をついてお詫びしました」

(X訴訟・平成十二年五月十五日付「大草陳述書」二七頁)

ところが、この「HY」なる女性は、要するに既婚者であるのだから、渡辺が独身であることを考えると、「HY」も渡辺同様、妙観講内で非難されるべきである。ところが、「HY」は渡辺が平成三年二月一日の幹部会終了後に処分を言い渡されたあとも、変わらず活動している。ということは、「HY」との男女交際を原因として渡辺を処分したという理由自体を疑わざるを得ない。

渡辺は、大草が渡辺の役職を理不尽に高下するのは妙観講講頭としての自らの覇権を講内に見せるためだと一貫して主張しており、これまでも理由なく役職をはずされ、理由なく役職を戻されたと述べていた。

原告大草は「陳述書」にこの渡辺の処分の後、

「被告渡辺の毒牙にかかっていた女子講員が同時に一〇名以上もいたことが判明したのです」

(「同」三〇頁)

と書いている。この被害の大きさに驚いて妙観講理事会は、今度は渡辺を活動停止処分にしたと原告大草は陳述した。

ところが、渡辺本人の実際の行動を見ると、「活動停止処分」にはなっていなかった。妙観講側が「活動停止処分」にしたと言った後でも、創価学会員との法論等に出てきていたのである。

X訴訟、Y訴訟では、この妙観講側から出された品性のない「上申書」群に対して、まったくと言っていいほど反論をしていなかった。反論をしなかったのは、おそらくこのような「上申書」群を裁判所が取り上げることはないと思っていたのだろう。

しかし「上申書」群それ自体は、それぞれ直接「判決文」に書かれることはなかったが、渡辺の平成三年二月一日の役職?奪や、その後の活動停止処分にされたという大草側の主張に信憑性を与えたと思われる。つまり、取るに足らないウソについても必要に応じて反論をしなかったことによって、認めるに等しい結果となってしまったといえる。

エゲツない手を使う者に対して距離を置くことは許されない。自らの手を汚しても、あるいはまた誰がどう評価しようとも、事の本質を逃がさないためには、魯迅がいうように〝溺れた狗は叩かなければならない〟のである。

では、極めつけ。平成二年から平成四年四月にかけてのことを綴った、渡辺より十二歳年上の女性の「上申書」の一部を紹介する。

「平成二年十二月頃(中略)関係を持ってしまった」

(X訴訟に提出された妙観講女性講員の「上申書」より一部抜粋)

「しかし、突然の班長会は、その後も度々行なわれ、その度ごとに私を最前列に座るようにした。気付くと、今迄気がつかなかったが、渡辺の下半身の部分に私の身体の一部がさわるようにし、そのうちどんどん大きくなるのがわかるように、ひどい時は、その物を押しつけられる迄に目の前に座らされこともあった」(「同」)

「ホテル代の支払いは全て私が払い、『講頭から頼まれて、○○へ行くのだけれども、お金がないんだ』と空っぽの財布を見せ、毎回お金をせびり取られた。総額で百万円以上になるのではないかと思う」(「同」)

「渡邉は母子同時に関係を続けたのです」(「同」)

妙観講の会合において毎回懲りることなく最前列に座り、衆人環視の中で「渡辺の下半身」が触れてくると分かっていながら継続してきた人間、ホテル代を払い続けてきた人間が被害者なのか? 自分の子供も渡辺と関係しているとわかっていて関係を続ける母親とは、いったいどういう立場なのか。「お前は被害者なのか?」と私は聞きたい。

ともあれ、このような事例をことごとく挙げ、「別表①」「別表②」を作成した。傍から見たら馬鹿げたとしかいいようのないこの作業を、根をつめてしなければならなかった。しかし、このような不自然な「上申書」群を裁判官が理解していると思い手を抜いたならば、裁判の流れがどうなるかわからないとの懸念が大いにあった。

それではさらに辻の証人出廷を求めた「陳述書」に戻ろう。

第5 大草がX裁判に提出した「陳述書」(乙ホ41)に見られる虚偽・変遷・齟齬・矛盾などについて

本件訴訟において、原告妙観講及び大草は、一連の電話盗聴事件を報じた被告報恩社らに対して、名誉毀損に基づく損害賠償請求を行なっている。しかしながら、後出の別表①において示したとおり、大草の主張それ自体が変遷し、かつ矛盾に満ちたものなのだから、損害賠償請求訴訟を提訴する資格がないことは明確である。

それよりも別表①を見れば、妙観講及び大草が、電話盗聴事件の真相を隠すために、どれほどの嘘を述べたかが明らかになる。さらには、この大草の陳述を真に受けて判決を下したX裁判及びY裁判の結果が、本件における判決に反映してはならないことが明確となる。

第6 原告大草と同妙観講による集団偽証について

妙観講の講員たちが、被告渡邉茂夫に対して、組織的に人格攻撃を行なっていることは注目に値する。しかも、妙観講の講員たちが提出した上申書は、相互に矛盾しており、大草の主張とも反するものがある。それでありながら、渡邉に対する人格攻撃においては、その軌を一にしている。これは相互に矛盾する妙観講講員の集団偽証が、組織的な指示で一定の目的を持ってなされていることを意味している。

渡邉の人格を貶めなければ、渡邉の電話盗聴事件に関する告白が真実であると裁判所に認定され、大草及び妙観講並びに大石寺という「真の資金提供者」たちが、社会的制裁を受ける。これを恐れた故に、このような集団偽証がなされたのである。後出の別表②を見れば、集団偽証による相互間の矛盾や、大草の主張に根拠がないことなどが詳らかとなる。

(妙観講不当訴訟・平成十七年十月五日付「北林陳述書」四九頁)

◆桑原テープに信用なし

X訴訟、Y訴訟において渡辺証言について信用性がないと判断された根拠の一つに桑原テープがある。桑原テープとは、渡辺と桑原年弘の電話での会話を録音したテープである。証拠提出されたのは、平成八年五月二十二日と同月二十四日の録音テープ二本である。

X訴訟、Y訴訟という先行二訴訟の判断を打ち破るには、この桑原テープを砕かなければならない。この桑原テープはれっきとした物証である。普通ならば、この桑原テープに真正面からぶつかることは危険だと思う。しかし私はそうとは考えなかった。

X訴訟において、桑原から「上申書」(平成十二年一月二十八日付)が出ており、そこには桑原に渡辺が電話で次のような話をしたと書かれている。

「学会は、おそらく、猊下が盗聴に絡んでいる事にしたい、と思っているでしょうけど、僕の知っている範囲では猊下は関係ないですよ」

「はっきり言えば、大草に盗聴の罪をかぶせて陥れ、妙観講をつぶして、小川住職と僕で妙観講の財産を山分けするんです。無実の者に罪をかぶせることくらい、平気ですよ」

これに基づいて大草側訴訟代理人は、渡辺に尋問した。当然のことながら渡辺は否認した。この尋問の後、その桑原の「上申書」に書かれている渡辺との会話を録音したカセットテープは、証拠として平成十二年六月一日(「証拠説明書」の提出日)に大草側から提出された。

渡辺は桑原の「上申書」の内容に強く反発したが、その証言の仕方次第では桑原テープは証拠提出されなかった可能性もあったと考えた。

そして私は、この桑原テープは、大草側がX訴訟で敗訴するかもしれないと踏み、バクチを打って出してきたに過ぎないと分析した。この桑原テープは私自身、何度も聞き直した。そうしていくつかの不可解なことに気づいた。判決の根拠となった最重要な部分は、音声が低くなり、ほとんど聞き取れないのである。私はこの録音テープがアナログのカセットテープで証拠提出されているが、デジタル録音されたものを改竄し、アナログテープに録音し直したものではないかと疑いを持った。特に気になったのは、二本のカセットテープのうち、X裁判で後に提出された平成八年五月二十四日に録音されたとされるテープである。このテープの会話を聞いていると、前半の話題と後半の話題とにズレがあると感じられた。私は編集部の者に、ある箇所を分岐点としてその前後の録音テープの時間を計るように命じた。

その結果、やはり重大な事実が発見された。それは桑原テープの信憑性を根底から覆すものであった。

では「陳述書」に戻る。

第7 桑原テープは証拠としての信用性に欠けること

1 桑原テープの反訳文の不可解さと録音時間の不自然さ

(1)X裁判、Y裁判において判決を大きく左右したものに桑原年弘氏(以下、「桑原」という)と渡邉の電話会話テープがある。

桑原が渡邉に連絡を取ったのは、私の「陳述書」(乙ホ70)の期分けによれば、B2期(隠蔽工作期 平成7年秋~平成9年5月まで)にあたり、まさに電話盗聴の事態が露見することを恐れて妙観講側が帝国リサーチの福田へのインタビューといった手段で事件自体を隠蔽しようとしたすぐ後にあたる。

つまり桑原が渡邉に電話で執拗な接触を繰り返したのは、大草の意を受け渡邉より電話盗聴が暴露された時に事件隠蔽に好都合な会話を録取することにあった。

(2)ここで注目せざるを得ないのは、この桑原が昭和60年に公文書偽造、同行使、詐欺、暴力行為の疑いで逮捕(乙ホ111「西日本新聞」昭和60年1月16日付夕刊)され、同年に弁護士法違反の疑いで再逮捕(乙ホ112「西日本新聞」昭和60年2月6日付夕刊)され、平成10年に県迷惑防止条例違反容疑(女子専門学校生のミニスカート内を使い捨てカメラで撮影)で逮捕(乙ホ113「毎日新聞」平成10年9月2日付夕刊)されたという事実である。この様な犯罪を継続的に行っている桑原には、社会人としての規範がないと見るべきである。したがって、桑原は金のためには違法行為を厭わない者と言え、桑原のもたらしたテープは改竄のおそれすらあり、裁判の判決に用いてはならないと言える。

(3)

① X裁判に提出された桑原と渡邉との電話会話テープは平成8年5月22日の23時30分から0時30分の会話とされるもの(甲26。以下、「テープ①」という)と、平成8年5月24日の8時から11時のうち8時30分から9時30分の会話とされるもの(甲27。以下、「テープ②」という)の2本がある。テープ①についてX裁判、Y裁判はその文言のうち、ことに、

「はっきり言えば、大草に全部罪かぶせてね、妙観講全部クビにして島流しにしてね、佐渡ヶ島の寺にでもやってね、それで、小川住職と僕で妙観の財産山分けしていいわけですよ。平気なんですよ、そんなこと。無実の者に罪かぶせたって。

佐藤せい子とか、中林とかには罪あるけども、それ以外のね、他の人が、仲間(聞き取り不可)罪かぶせたってね、無実の者だからいいんだけれども」(甲26の2、10頁)

という渡邉の発言を捉えてそれを問題としている。これは反訳の違いにより決定的なニュアンスのズレが会話に生じている疑いがある。X裁判においてX側は以下の様に反訳文を提出している。

「はっきり言えば、大草に全部罪かぶせてね、妙観講全部クビにして島流しにしてね、佐渡ヶ島の寺にでもやってね、それで、小川住職と僕で妙観の財産山分けしていいわけですよ。平気なんですよ、そんなこと。無実の者に罪かぶせたって。佐藤せい子とか、中林とかは罪があるけれども、それ以外のね、(佐貫とか)、仲間(以外なら別に)罪をかぶせたってね、無実の者だからいいんだけれども」(乙ホ162「X裁判高裁準備書面」14頁)

このような反訳内容であれば、渡邉が無実の者に罪をかぶせるとしている者は、本件電話盗聴事件に関与していない「無実の者」たちであるということが判然となる。この微妙な言い回しの部分で音声が極めて低くなり、大草側より誤った反訳が出されたことは、極めて意図的なものであったと言わざるを得ない。

なお、当方がこのたび裁判所を経由して入手したテープにおいては、ダビングが繰り返された結果、劣化し、どちらの反訳が正しいとも言えない。よって聞いても判別不能なテープにより、判決が下されることがあってはならない。

② ただし、渡邉はX裁判において以下のように証言している。

「無実の者に罪をかぶせることぐらい平気ですよ、こういう会話の内容がちょっとあるんですが。

それは嘘八百ですね。

嘘なら嘘でいいんです。そういうことはない。

まがうことなき嘘です」(乙ホ44「X裁判第13回口頭弁論調書」14頁)

桑原との電話会話テープの反訳が、X裁判においてX側の主張したようなものであれば、この渡邉の証言は、大草ら日蓮正宗側の本件電話盗聴に関与した者を省き述べたもので、渡邉において電話盗聴をなした者たちを決して免罪する思いがなかったことがうかがわれ、よって渡邉が真実にそって証言したものであることがわかる。この渡邉の証言は、決して日蓮正宗の関係者が無実で、その者たちに「無実の罪」を着せようとしたものでないと取れるのである。

③ さらにテープ①について言えば、以下のような会話が見られる。

「やっぱり首謀者は大草だしね」

「盗聴したテープを受け取って大草のところに届けて、大草と一緒に聞いて、それは顕正会であれ、創価学会であれ、宗門であれ、正信会除く全ての団体盗聴してますから」

「大草の命令によってやりましたと言ってるわけですね」

「今まで喋ったことはすべて本当だけども、さらにその奥、その奥ってことになると、言えることと言えないことがあるんで、僕にとって一番大事なのは、はっきり言えばね、はっきり言えば、猊下の御尊体が無事であればね、はっきり言ってあとはみんなどうなってもいいんですよ」

以上のような会話内容が一顧だにされることなく、大草側により意図的な反訳が行なわれている箇所をもってX裁判、Y裁判の心証形成がなされたことは実に残念なことである。

(4)テープ①の反訳文には、「平成八年五月二十二日 二十三時三十分?零時三十分」という正確な記述があるが、それを裏づけるものはない。

テープ①もそうだがテープ②もまた大草側にとって都合のよい箇所のみを法廷に出している。テープ内容からして桑原と渡邉は相当、頻繁に会話がなされていると思われる。しかもその会話録取の目的は渡邉より大草側にとって有利な言質を取ろうとしたものであるから、その都度、録取されたものである。

それを自らに都合のいい箇所のみを編集し法廷に提出したものと見るべきである。その痕跡を鮮やかに残しているのがテープ②である。テープ②の反訳文(甲27の2)の21頁に「つなぎ」という表記がある。これは明らかにカセットテープの折り返し部分で、カセットテープのA面からB面に切り返された箇所と見るべきである。ところが報恩社側が裁判所から提供されたテープ②においてこの「つなぎ」の箇所の前後の録音時間を計ったところ、以下のようになる。

最初から「つなぎ」まで 約40分

「つなぎ」から最後まで  約20分

この「つなぎ」前後の時間は重要である。この時間は、60分テープはもちろんのこと、90分テープ、120分テープの「つなぎ」にも当てはまらない。よって、裁判所に提出されたテープは、原本テープより都合のよい箇所を編集したか改竄をしてそれのみを出したものと思われる。

2 桑原テープ入手についての大草側の変遷

(1)桑原テープについての不可解な点は大草側の入手と反訳事情の変遷である。

「X裁判証拠説明書」(乙ホ145)

テープ①(乙ロ78?1)

「原本」「平成8年5月22日作成」「作成者 桑原」

同反訳文(乙ロ78?2)

「原本」「平成8年5月22日作成」「作成者 大草」

テープ②(乙ロ115?1)

同反訳文(乙ロ115?2)

「証拠説明書」なし。

「Y裁判証拠説明書」(乙ホ163、164)

テープ①(乙ロ14?1)

「原本」「平成8年5月22日作成」「作成者 桑原」

同反訳文(乙ロ14?2)

「原本」「平成8年5月22日作成」「作成者 大草」

テープ②(乙ロ87?1)

「原本」「作成者 桑原」

作成日の記載なし。

同反訳文(乙ロ87?2)

「写し」「作成者 妙観講」

作成日の記載なし。

「本件裁判原告証拠説明書」

テープ①(甲26?1)

「平成8年5月22日」

原本、写し及び作成者の記載なし。

テープ②(甲27?1)

「平成8年5月24日」

原本、写し及び作成者の記載なし。

X裁判及びY裁判の「証拠説明書」を見れば、そのテープが録音されたのが平成8年5月22日とされ、録音が桑原となっている。ところが反訳原本を同日に大草が作成している。桑原は福岡県に住み、大草は長野県に在住し、おもに東京で布教活動をしていたのだから、5月22日に録音した物を大草が同日に反訳したというのは、不自然としかいいようがない。
なお、X裁判の「証拠説明書」にはテープ②についての証拠説明はない。ただし、Y裁判においては桑原が作成し妙観講が反訳を作ったとするが、いずれも録音日、反訳文作成日の記述がなかった。本件裁判「証拠説明書」ではテープ①について、録音者、及び反訳文の作成者の記載がなく、テープ②については、平成8年5月24日であるとしたこの裁判の「証拠説明書」を見る限りにおいては録音がいつなされたのか、反訳文の作成が誰にあるのか判然としない。

(2)この桑原テープ及び反訳について渡邉側より本法廷において求釈明された大草は、入手した時期について、「平成12年春頃、ダビングしたテープと手書きの反訳書を桑原が妙観講に郵送してきた」(「原告準備書面〈4〉10頁」)と釈明しているが、桑原は「上申書」(乙ホ167)に渡邉と電話で会話している当時、「聞き流すことのできないひどい悪口などについては、その都度、大草講頭に報告しました」と自ら記しているのであるから、桑原が平成8年の渡邉との会話の録音テープの内容を平成12年まで大草に聞かせなかったとは到底、信じられるものではない。

さらに大草は、X裁判、Y裁判においてこのテープを「原本」と主張していたが、ダビングしたものであると主張を変え、『原本』についても鑑定されるのを恐れたのか、「平成12年春頃、テープ原本を所持していたのは桑原。現在、所持しているかどうかは不知」(「原告準備書面〈4〉9頁」)と述べている。このテープによって電話盗聴事件への不関与が証明されるのであるから、「原本」テープが大草側より積極的に出されてしかるべきである。

ところが渡邉側がこのテープに執拗な疑義を本件訴訟において持っていることを察知し、大草側はその「原本」テープを本法廷に積極的に提出することを避けた。

以上のような大草側の対応からして、桑原テープがいつ録音されたのか、いつ大草側に渡されたものか、全くはっきりとせず、しかも大草側から自らの判決に有利に働くにもかかわらず桑原テープのマスターテープが出されないのであるから、このテープについては、偽造をされたおそれもあり、桑原テープは判決の事実認定において用いられるべきではないと考える。

もし万が一、本裁判所が判決に用いる場合は、テープを鑑定しそのうえで、反訳文全体の主旨と、桑原側がいかに渡邉の会話を誘導しているかとの内容をよく見究めたうえで慎重に扱うべきである。(「同」五〇頁)

◆思いもしなかった吉報

妙泉坊電話盗聴未遂事件の実行犯である辻栄三郎を法廷に呼び、証人調べをしてほしいという「陳述書」を提出したのが、平成十七年十月五日。しかし、法廷は沈黙したままであった。一連の電話盗聴事件について真実の報道をしながら、ゆえなく被告の座にすわらされた者としては、裁判所の沈黙の時間が続くことには耐えがたいものがあった。その間、さまざまなことを思った。

先行二訴訟は最高裁までいって事実認定がなされている。その事実認定を覆すような名判決を東京地裁民事四一部の裁判長ができるのだろうか。私たち国民の眼から見れば、確かに日本国における司法は、他国に比べて公正ではある。しかしながら三権分立の司法とはいっても、そこで働く人たちは国家公務員である。順当な出世も望んでいるだろう。また裁判所という閉ざされた社会の中で、軋轢を生じたくないという気持ちもあるだろう。果たして最高裁までいった先行二訴訟の事実認定を覆すような判決を下すことができるのだろうか。ましてや、これまでの裁判長の訴訟指揮をみるならば、先行二訴訟を転覆させるような気配は感じられなかった。

私には前例に沿った事実認定がなされるとしか思えなかった。そうなれば、これまでもその懸念を書いてきたように、被告側が勝訴するとはいっても、それは「相当性」において勝つ方途しか残されていない。

一連の電話盗聴事件の実行犯を、私は入手した情報と裏付取材によって、手の届くところに追い詰めながら逃がしたことになる。それは筆を執る者の敗北を意味する。

ましてや電話盗聴を実行した者は、創価学会を破門にした日蓮正宗に所属する者たちであり、しかもその最高命令者は〝法主〟である阿部日顕であるとの嫌疑は極めて濃厚であった。しかも、その全容は解明されなかったけれども、創価学会の幹部が電話盗聴されていたことも事実である。それでいながら事件を報道した創価学会が敗訴するようなことになれば、創価学会の勝利の歴史に瑕瑾を残すことになる。

状況はあまりにも悲観的だった。

この裁判は平成十四年十月十六日に提訴されて以来、ここまで両四年の歳月をかけて争ってきたのに、電話盗聴の実行犯たちに引導を渡すことができないのならば、それは無念の一語に尽きる。私はそのような内心忸怩たる思いをもって、平成十八年の正月を迎えた。新年とはいえ、とうてい「おめでとう」などといった声を出す気持ちになれなかった。

ところが光明はさした。

判決言い渡し日を控えた平成十八年二月三日、東京地裁民事四一部合議一係より判決日を二月二十二日から三月二十九日に変更するとの連絡が、(株)報恩社の訴訟代理人を務める大阪芙蓉法律事務所の幸田弁護士にあった。その連絡を代理人弁護士より聞いた時、私は、

「もしや……」

と思うと同時に、

「裁判所は相当、苦慮しているな。A期、B期の『陳述書』、また、辻を法廷に出してもらいたいという『陳述書』が相当、効いている」

と考えた。

判決日は三月二十九日ということだったが、これを前にした三月十三日、再び東京地裁民事四一部合議一係より代理人弁護士へ連絡があった。この連絡は、終結した弁論を再開する、判決言い渡し日とされていた三月二十九日の口頭弁論期日を取り消すというものであった。さらに再び、三月二十二日、東京地裁民事四一部合議一係より代理人弁護士へ連絡があり、本件の口頭弁論期日が六月二十一日と指定され、(株)報恩社が証人申請を強く申し立てていた辻栄三郎の尋問申出が採用され、同日、辻の尋問をすること、また、裁判所の職権により同日、渡辺の尋問をすることが通知された。

私の委任した弁護士たちが、この事態にたいそう驚き喜んでいる様を見て、私は裁判所のこの訴訟指揮がどれほど稀有なことであるかを認識した。異例中の異例ともいえる裁判所の訴訟指揮であった。

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