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第8章 真実の証言は認められなかった

渡辺茂夫は、Xを原告とする訴訟(以下「X訴訟」と呼ぶ)において、平成十一年十月二十一日と同十二年二月十日の二回にわたり東京地裁の法廷で証言を行なった。渡辺は私と約束したとおり、法廷において正直に証言したのである。

◆最高命令者は阿部日顕であると明言

渡辺は、Yについての電話盗聴を行なったことも述べた。そして、電話盗聴を大草に命じられたことや、阿部日顕が最高命令者であることについて理境坊住職の小川只道に確認したことを次のように証言した。

X訴訟被告渡辺茂夫代理人宮本

宮本 Xさんは平成三年の六月ころ「新雑誌X」というところに出たことがあるんですか。

渡辺 はい。

宮本 そこではXさんはどのような内容のお話をしていたんでしょうか。

渡辺 確か以前創価学会の顧問弁護士をしていた山崎正友氏が刑務所に入っているときに、伝言で御法主日顕上人猊下があのときはごめんねというふうに言ってたという伝言を伝えたという類の話で出ていたと思います。

宮本 そういうこともあってXさんが創価学会に対する情報源ではないかということのだんだん確信を持つようになったということなんでしょうか。

渡辺 そのとおりです。

宮本 あなたのほうではYさんのお話や、そこの雑誌の記事等を受けて、被告の大草さんにはどのような報告をしたんでしょうか。

渡辺 このようにYが言っていますと、宗門の情報を学会にリークしているのはこういう人物がいるというふうなことを、Yが言っていましたというふうに伝えました。

宮本 先ほどあなたのほうで言われた秋元渉外部長、八木主任とX氏が、その怪文書である「地涌」のネタ元である可能性があるという話をされたんですか。

渡辺 はい。

宮本 それに対して被告の大草さんはどのような反応をされましたか。

渡辺 あるかもしんねえぞと、やったれと言いました。

宮本 やったれというのはどういう趣旨ですか。

渡辺 盗聴だと思います。

宮本 その発言を受けて、あなたのほうでは大草さんに何かを言ったんでしょうか。

渡辺 はい、X氏は信者なのでともかく、八木信瑩御尊師と秋元広学御尊師は、役職も僧階も小川住職よりも上ですから、いわば上司にあたるわけです。そういう方も含めてやってしまうというのは大丈夫なんでしょうかというふうに言いました。

宮本 やってしまうというのは電話盗聴をということですか。

渡辺 そうです。

宮本 あなたのほうから小川住職に対する報告はしなくていいのかというような話を、大草さんにはしたんでしょうか。

渡辺 そのときにはしなかったですけれども、やって大丈夫なのかということだけ聞きました。

宮本 大草さんのほうは、それに対して何か言われたことはありましたか。

渡辺 山行って話をつけてくると言いました。

宮本 山というのは何のことですか。

渡辺 山という以上、日蓮正宗総本山大石寺のことです。

宮本 被告の大草さんは、大石寺に行って話をつけてくると言ったんですね。

渡辺 はい。

宮本 電話盗聴を行うことの了解をもらいに行くということなんですか。

渡辺 そうです。

宮本 具体的に山のだれと話をつけるという趣旨で大草さんは話をしたんですか。

渡辺 私がそのとき思ったのは、小川住職なら理境坊に行って話をつけてくると言われるでしょうから、山行って話をつけてくるという以上、大草氏の言った意味は御法主日顕上人猊下だと思います。

宮本 電話盗聴を行うことについて、被告の大草さんからあなたのほうには何か具体的なお話はあったんでしょうか。

渡辺 最初に依頼されたときですか。

宮本 はい、そういう電話の盗聴を行うことに関してあなたのほうでは不安を持っていたわけですね。それについて大草さんのほうで。

渡辺 山へ行って話しをつけてくると大草さんが言って、帰って来てから安心しろと言われました。

宮本 なぜ安心していいということなんでしょうか。

渡辺 大草氏のそのときの言葉をそのまま言えば、かまうことはない、やっちまえ、猊下も御照覧だと言いました。なにしろ直々の特命であるというふうに大草氏の言葉で私は聞きました。

宮本 大草さんの話しを聞いてなぜあなたは小川住職と話をしたのですか。

渡辺 聞いたというより、やはり宣徳寺とかX氏のところとは違いまして、大石寺は境内も広いですから、いきなり業者が行っても作業はできませんので、事前に小川住職のところに実務的にはどのようにして山に入るか、だれが随行するかというふうなことも含めて打ち合せに行きました。

宮本 ということは小川住職もその内容をご存じだったということですね。

渡辺 はい。

宮本 小川住職との間で盗聴に掛かる費用について話をしたことはありますか。

渡辺 はい。私のほうからこれは小川住職に申し上げたんですが、いつも支払のことで高い安いと帝国リサーチと大草氏の側で、もめることが多かったもんですから、今度はきちんと支払っていただけるんでしょうかと、支払のほうは大丈夫なんでしょうかというかということを言いました。

宮本 それに対して小川住職はどのようにおっしゃっていましたか。

渡辺 大丈夫だよと、上が知っているんだからと、上が知っているんならいいじゃないかとおっしゃいました。

宮本 上が知っているからという上というのは、具体的にだれを指すんですか。

渡辺 御法主日顕上人猊下しかいないと思います。

宮本 具体的にそれはだれがお金を出すということですか。

渡辺 山へ行って話しをつけてくると言い、山へ行って話しつけて来たというわけですから、猊下以外にないと思います。(X訴訟・第一二回・平成十一年十月二十一日「渡辺調書」一六頁)

◆傍聴席の信じられない狂態

私は、(株)報恩社編集部の者に傍聴に行かせていたので、その報告を聞いて安堵した。

その一方で私が驚いたのは、法廷で起きたという次のような出来事であった。渡辺が先に紹介したような証言をした平成十一年十月二十一日の東京地裁の法廷には、妙観講の女性講員十数名が派手な服装をして傍聴に来ていた。その女性講員らが、渡辺が入廷して姿を現すやいなや、

「うわー」

「きゃー」

などと一斉に奇声を発し、法廷内は騒然となった。そして渡辺に聞こえよがしに、

「汚い」

「えー、なに、あれ」

「信じられない」

「ブタみたい」

などと罵声を浴びせたというのである。妙観講は渡辺を挑発し、冷静さを欠かせようとの作戦に出たのだと思われる。これら妙観講の女性講員たちの行動が法廷で許されるはずもなく、彼女たちは書記官に何度も注意された。しかし、彼女たちは渡辺が何か陳述するたびに、

「うっ」

「げっ」

「ウソばっかり」

などとつぶやき、嫌がらせを続けた。

ところがおもしろいことに、平成十二年二月十日、渡辺の第二回目の出廷の際には、これら妙観講の女性講員らの姿はほとんど見られなかった。これは妙観講の女性講員らが、組織立った指示で傍聴にかこつけ法廷に現れて渡辺に対する嫌がらせを行ない、組織立った指示で法廷に来なかったことを示している。

私はこれらの報告を聞き、妙観講がそのようなことを続ければ、裁判所の日蓮正宗側に対する心証が悪くなると同宗側の弁護士が判断し、その判断にもとづいて妙観講側が第二回目の渡辺の証言の際には、その嫌がらせをやめたのだろうと思った。

ともあれ渡辺は平成十一年十月二十一日の法廷において、大草の指示で、平成三年の電話盗聴実行当時、創価学会学生部の幹部であったY(裁判当時は創価学会の職員となっていた)の自宅を電話盗聴していたことを述べ、自分の関わった電話盗聴の被害者たちに謝罪をした。これを受けてYは、平成十一年十二月十六日、東京地裁に渡辺茂夫、大草一男、(株)帝国リサーチ、理境坊、同坊住職・小川只道、大石寺、日蓮正宗管長・阿部日顕を被告として、各自二千二百万円を支払えとの損害賠償請求訴訟を起こしたのである。もちろん、その請求原因は電話盗聴だ(以下、このYが起こした訴訟を「Y訴訟」と呼ぶ)。

平成十三年十二月二十日、東京地裁でX訴訟の一審判決が出た。東京地裁はXに対する電話盗聴実行の罪を、実行犯である(株)帝国リサーチ及びただ一人自白した渡辺のみに帰着させた。残りの被告である大草、理境坊、同坊住職小川只道、大石寺、日蓮正宗、同宗管長・阿部日顕については、Xに対する電話盗聴への関与を「認めるに足りる証拠がない」などと判示した。判決で電話盗聴に関与したと認定されたのは、渡辺本人と(株)帝国リサーチのみであった。

要するに、渡辺は阿部日顕、小川只道、大草一男などの電話盗聴への関与を証言したが、それは認められなかった。渡辺の証言が信用できないと退けられたのである。

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