北林芳典の公式ウェブサイト 著作・発行物の紹介、教学に関する論文や裁判履歴・記録など

|サイトマップ|

第4章 『地涌』による電話盗聴事件の報道と犯人の狼狽

私は僧侶Aから情報を入手した時点より、宗門中枢の情報が漏洩していることや『地涌』が次々に宗門内部の情報を報道していることから、阿部日顕ら宗門の首脳が、情報漏洩ルートの解明と『地涌』関係者の割り出しを目的にして電話盗聴を命じたと判断していた。そうであれば私が僧侶Aより入手した電話盗聴に関する資料とテープを、『地涌』の関係者に提供することがもっとも妥当であると考えた。

◆電話盗聴事件が報じられた

『地涌』への情報漏洩ルート及び『地涌』関係者の割り出しのために行なわれた電話盗聴事件を『地涌』が報道する。それは実に皮肉な歴史的事実となるだろう。『地涌』編集部は私の提供した情報に基づき、その後、三回連続して、日蓮正宗による電話盗聴事件について報じた。その二回目の報道がなされた後、たまらず日蓮正宗側の機関紙『慧妙』が反論をした。それがまた、一層疑惑を深めることになる。

まず、第一回目。『地涌』が同事件を報じたのは、第八九七号(平成八年一月二十六日発行)であった。『地涌』は、

「妙観講・大草一男が渉外部長・秋元広学の電話を盗聴していた これは日顕の親衛隊である同講の違法活動のほんの一部だ」

と題し、以下のように報じた。

日顕宗理境坊(住職・小川只道)所属の妙観講が電話盗聴をおこなっていた。

電話盗聴の命令者は妙観講講頭の大草一男。電話盗聴先は、日顕宗渉外部長・秋元広学が住職を務める宣徳寺(東京都世田谷区駒沢)。

電話盗聴は、平成三年十一月二日、三日、六日~十日、十二日~十六日、十八日~二十一日の計十六日間おこなわれた。

電話盗聴を実際におこなったのは、妙観講から発注を受けた特殊調査会社の(株)帝国リサーチ(本社・東京都新宿区)。この電話盗聴の代価として大草一男は、同社に対し百万円余の支払いをおこなった。

(中略)

では、大草はどうして渉外部長・秋元広学の電話を盗聴したのであろうか。

日顕一派は「C作戦」を含めた極秘情報が創価学会側にリークされていたとの疑いを、平成三年初頭より持ち始めていたようだ。日顕一派は先立つこと平成二年十二月二十七日に池田名誉会長を突如、総講頭職からはずし、「C作戦」に基づき創価学会側の態勢の整わないうちに電撃的に創価学会を〝破門〟し、動揺する創価学会員を檀徒化しようとした。ところが創価学会側は、池田名誉会長が宗門により強権的に総講頭罷免されたことに反発し強固に団結した。その対応があまりに早かったことに、日顕一派は「C作戦」が創価学会側に事前にリークされていたのではと疑ったのである。本紙『地涌』(第一五号・平成三年一月十五日発行)が「C作戦」の概要を報じたことも、「C作戦」実行の密議にかかわった者がリークしたとの疑いを深めたようである。

今日では宗内周知のように、「C作戦」が日顕中心に最初に謀議されたのは平成二年七月十六日に大石寺東京出張所(文京区西片)においてであった。二回目は二日後の同月十八日に日顕宗総本山大石寺大書院においてであった。この二回の謀議の出席者は、日顕、藤本日潤、早瀬義寛、八木信瑩、河辺慈篤、秋元広学、関快道。この出席者のうち、創価学会側への「C作戦」のリークを一番疑われていたのが、今回、妙観講により電話盗聴された渉外部長・秋元広学である。

秋元が創価学会側のスパイと疑われたのは、渉外部長として無能であったことにもよる。マスコミに対する手の打ち方が悪く、日顕一派の者たちは秋元を、

「創価学会のスパイだ」

と頻繁に陰口していた。(『地涌』第八九七号より一部抜粋)

続いて『地涌』第八九八号(平成八年二月一日 発行)は、

「日顕の親衛隊を気取る妙観講は渉外部長・秋元のみならず 一民間人とその離婚した妻の電話まで盗聴し尾行していた」

と題して以下のように報道した。

妙観講は、渉外部長・秋元に対する電話盗聴に終わらず、民間人に対する電話盗聴もおこなっていた。電話盗聴されたのは、埼玉県川口市在住のX。今回の場合も秋元の場合と同様、妙観講講頭・大草の依頼を受けた特殊調査会社・(株)帝国リサーチ(東京都新宿区)が、電話盗聴装置を設置した。同社は、十一月十二日、十三日、十六日の三日間にわたり、Xの自宅アパート(埼玉県川口市)の電話線に電話盗聴器を設置し、無線で電話による会話を傍受し録音した。

妙観講はXのアパートのみならず、Xの離婚した妻の店『Z』の電話にも盗聴器を設置し、会話を盗聴した。この電話盗聴は、同年十一月二十五日、二十六日、二十七日、三十日、十二月二日、九日の六日間にわたりおこなわれた。

Xおよび離婚した妻に対しては、この電話盗聴のほか、身辺調査、張り込み、尾行がおこなわれた。その調査報告は、「平成三年十二月十三日」付で(株)帝国リサーチから妙観講に報告されている。

本紙『地涌』編集部は、その報告書をこのたび入手した。その報告書の表題は「特殊実態調査報告書」となっており、その一ページ目には、

「御依頼に基き、X(以下、本人と称す)に係る標記の件、特殊工作及び内偵、尾行張り込み調査の結果を、次の通り御報告申し上げます、尚、本件は現在も調査継続中のため、今回は中間報告とする」

と記されている。(『地涌』第八九八号より一部抜粋)

ただし、X、Zは『地涌』の本文中では実名。

◆あわてた『慧妙』がドジな記事

『地涌』の第八九七号、第八九八号は、連続して日蓮正宗による電話盗聴事件を報道した。すると案の定、日蓮正宗側が反応をしてきた。

阿部日顕が自ら題字を書き、阿部日顕が宗内に読むことを徹底してきた『慧妙』七四号(平成八年二月一日発行)が、見え透いた反論記事を掲載してきたのだ。この記事では、電話盗聴実行犯である(株)帝国リサーチの経営者である「福田社長」が反論を行なっている。その反論の口調からみると、この「福田社長」は男のようであり、法人登記簿謄本上の代表取締役である福田惠美子ではない。どうやら『慧妙』に出ている「福田社長」は、同社の実質的な経営者である福田政(福田惠美子の夫)のようである。

この「福田社長」と電話盗聴を依頼した妙観講及び電話盗聴を命令した日蓮正宗側が、共同して電話盗聴の事実を隠蔽しようとしていることが明らかであった。

この『慧妙』の反論記事のタイトルが振るっている。

「『妙観講の盗聴疑惑』の言い掛かりを斬る 調査会社のT社社長に緊急インタビュー」

などと大仰に黒白抜きでタイトルを書き、記事の真ん中に六段ブチ抜きで二行にわたり大見出しが付けられている。

「うちの社名を悪用した、大草さん潰しですね。

どこへでも出ていって決着をつけます。」

柄の悪い「社長」さんである。その言い訳はボロ丸出し。

「福田社長」は、日蓮正宗渉外部長の秋元広学が住職を務める世田谷の宣徳寺が電話盗聴された時期として、『地涌』第八九七号が報道している「平成三年十一月二日、三日、六日~十日、十二日~十六日、十八日~二十一日の計十六日間」について、次のようにインタビューに答えたという。

そこで、本紙編集部・Y記者は、この際、一番の当事者に真相を聞こうと、即日、T社・福田社長にインタビューを申し込んだ。

以下に、インタビューの内容を紹介する。

「先程、ここに(『地涌』に)書いてある日時を調べてみましたら、たしかに、その時期に該当する仕事はありましたが、それは盗聴などではありません。他の人からの調査依頼で行なった、張り込み調査です。昼でも夜でも写る特殊なカメラを持って行って設置し、張り込んだわけです。その目的? それは私は依頼者ではないから、分かりません。でも、探偵社としては、合法的な範囲での、普通の仕事ですよ」

(平成八年二月一日付『慧妙』より一部抜粋)

全く同じ日に同じ寺を「昼でも夜でも写る特殊なカメラ」まで持って行って、昼夜兼行で張り込んでいるのならば、電話盗聴器の電池や受信機と連動して盗聴電波の音声を録音しているカセットテープの交換に来ている不審者に気づかないはずがない。それにしてもこの「T社」の「福田社長」は物事の道理がわかっているのであろうか。

『慧妙』は日蓮正宗の機関紙である。その日蓮正宗の機関紙の記者に向かって「福田社長」は、日蓮正宗の末寺を昼夜兼行で見張っていたと、「即日」応じたインタビューで積極的に話している。これはどう考えてもおかしい。興信所が自ら行なった探偵業務について、それを何の躊躇もなくインタビューで話すことなどありえようか。

『慧妙』の対応もおかしい。

「福田社長」は日蓮正宗の末寺に対して監視行動を行なったと述べているのである。その行動が日蓮正宗にとって敵性行動であることは言うまでもない。『慧妙』は、「福田社長」の日蓮正宗末寺に対する敵性行動について何ら非難を加えずに、そのまま掲載しているのである。『慧妙』の記事は、この「福田社長」の宣徳寺に対する監視行動について、「信教の自由を侵された」とか「プライバシーの侵害だ」などという、当然出てくるであろう批判的な言辞をその記事中に留めていない。

そうすると、これはどういうことになるのであろうか。監視行動をした側とされた側、つまり(株)帝国リサーチ側と日蓮正宗側の利益が一致したところで、この『慧妙』の記事が成立しているのである。末寺が監視行動をされたことなど軽微なことでしかない、といった立場で、それよりも重大な犯罪事実を隠すために、「福田社長」のインタビュー記事は成立しているということになる。つまるところ、「福田社長」と『慧妙』は一体となって、『地涌』が暴露した電話盗聴事件について隠蔽することに躍起になっているとしか見えない。

「福田社長」は、『地涌』が電話盗聴が行なわれた時期として指摘した平成三年のまったく同じ時期に、『地涌』が指摘したのとまったく同じ寺に対して見張り調査をしていただけで、『地涌』がそれを電話盗聴にすりかえていると開き直ることで、読者の目先を誤魔化そうとしているのだ。しかし実際には、「T社」こと(株)帝国リサーチ発行の「請求書」と電話盗聴された録音テープを私が入手し、私が『地涌』編集部にそれらを提供し、『地涌』編集部はそれらの動かぬ証拠に基づいて『地涌』の記事を書いている。したがって、『慧妙』を使ってこのような姑息な言い訳を「福田社長」にさせてみたところで、後に禍根を残すことは明白であった。

「福田社長」は自らこのような墓穴を掘りながら、続けて次のように啖呵を切る。

「そのような事実がないのにも拘わらず、こうやって私の会社の名前が出されているわけですから、これはその依頼人が、大草さんを攻撃するために、うちの名前を勝手に利用した、私を裏切った、ということです。私は憤慨していますし、これは考えなければいけないですね」(同)

「T社の責任者の福田が、このようにコメントをしたと、私の実名を出して、はっきり書いていただいて結構ですよ。これ(『地涌』『勝ち鬨』)に反論されるんでしたら、堂々と反論してください。それで、あちらが、どうしても〝そうだ(「大草氏が依頼して盗聴を行なった」)〟と言うんだったら、こちらは〝そうじゃない〟と言ってるわけですから、どこにでも出ていって、ちゃんと決着をつけますよ」(同)

「私も、この仕事で三十年以上やってますから、この業界では〝T社の福田〟といえば、知らない者はいません。まして、一部上場企業(といって有名企業名を数社挙げ)とも顧問契約をしているうちの会社を、こんなふうに実名入りで〝犯罪を行なった〟などと書かれたわけですから、じつに迷惑な話です。どうしても〝T社がそういうことをした〟と言い張るんだったら、うちは徹底的に戦っていきますから、どこに出ても」(同)

「福田社長」は程度の悪い脅し文句を連ねている。ここまで啖呵を切りながら、「福田社長」はその当時、法的な手段をまったく取ってこなかった。勿論、妙観講も同じである。

◆大石寺ナンバー2も電話盗聴の標的

ところでこのインタビュー記事の中で、「福田社長」はドジな発言をしている。いや、『慧妙』の編集に携わる妙観講サイドが、事情を知っているが故に、より深刻な妙泉坊に対する電話盗聴未遂事件を糊塗しようとして、勇み足で先回りしすぎてしまった、と見るべきか。「福田社長」は次のように述べたのである。

「なお、大草さんからは、これまで関係先の電話が盗聴されていないか調べて欲しい、と盗聴器を探し出す仕事を依頼されたことがあります。それで、富士の理境坊とか、東京の妙観講本部の建物とか、長野や静岡の会社とかお寺とか、一件あたり五万円前後で、何ヶ所か調べさせてもらったことはありますよ」(同)

「富士の理境坊」の盗聴器の調査を依頼されたとは、「福田社長」もなかなかおもしろいことを言ってくれるものだ。「富士の理境坊」の盗聴器の発見調査という名目で、いったい何を隠そうとしているのであろうか。理境坊の裏手にある道を隔てたところには、妙泉坊がある(本書306頁、並びに巻末資料6参照)。この二つの建物の位置関係を考えると、理境坊の電話盗聴器発見を大義名分としてカムフラージュをし、(株)帝国リサーチの電話盗聴実行犯が妙泉坊を電話盗聴しようとしたのではないかとまで推測された。

ともあれ、この『慧妙』で「福田社長」が述べた「富士の理境坊」という言葉をあたかもきっかけとするかのように、『地涌』第八九九号(平成八年二月五日発行)は、大石寺の理境坊の裏手にある妙泉坊に対する電話盗聴未遂事件を、

「こんどは大石寺主任理事・八木への電話盗聴計画が発覚! 妙観講の大草による違法活動は際限のない広がりを見せる」

と題して、次のように報じた。

妙観講・大草は、既報の渉外部長・秋元ら三者以外にも、大石寺塔中の妙泉坊(静岡県富士宮市)すなわち大石寺主任理事・八木信瑩の自坊への電話盗聴を(株)帝国リサーチに依頼した。(株)帝国リサーチは、妙泉坊の電話盗聴を実行するため下調べをおこなったが、

「電話回線が特定できない」

という理由で中止となった。(株)帝国リサーチはこの電話盗聴の下調べの費用を、秋元、Xなどに対する電話盗聴費ともども「平成三年十二月九日」付で妙観講に請求している。なお妙泉坊に対する電話盗聴の下調べは、秋元、Xに対する電話盗聴と同時期におこなわれた。

妙観講による電話盗聴を含めた違法な調査活動が、日顕の側近である大石寺主任理事・八木信瑩にまで及ぼうとしていたことは、日顕を頂点とする日顕一派内において相互に根深い不信感が芽生えていることの証左である。かつ妙観講講頭・大草が、日顕宗内で覇権を得るためには手段を選ばぬ者であることを示し、さらには妙観講の違法な調査活動が広範囲に際限なくおこなわれてきたことをも裏づけるものである。

いま大草は、この電話盗聴事件を隠蔽するために躍起となっている。

『慧妙』(平成八年二月一日付)に、「『妙観講の盗聴疑惑』の言い掛かりを斬る 調査会社のT社社長に緊急インタビュー」と題するインタビュー記事が掲載されている。

同記事は、本紙『地涌』(第897号)が妙観講による渉外部長・秋元への電話盗聴事件を報じたことに驚愕し、電話盗聴の実行犯である(株)帝国リサーチ社長の福田にインタビューし電話盗聴という犯罪を隠蔽することを目的としている。『慧妙』自体は妙観講が主体となって編集しているものであるから、このインタビュー記事は電話盗聴の共犯者同士が演ずる掛け合い漫才ならぬ悪質な隠蔽工作といえる。

だが、この記事のほとんどを形成する(株)帝国リサーチ社長・福田の発言を冷静に読めば、妙観講と同社の関係、事件の本質が見えてくるのである。

その一部を指摘すると以下のとおり。

「なお、大草さんからは、これまで関係先の電話が盗聴されていないか調べてほしい、と盗聴器を探し出す仕事を依頼されたことがあります」(平成八年二月一日付『慧妙』)

この福田自身の発言により、大草個人と当人とは直接に関係のあることが確認される。さらに(株)帝国リサーチが電話盗聴器の発見の技術を持っているということは、とりもなおさず電話盗聴器について相応の知識を持っていることを裏づけるものである。

(株)帝国リサーチ社長・福田は、本紙『地涌』が渉外部長・秋元への電話盗聴を実行したと特定した日について、つぎのように語っている。

「先程、ここに(『地涌』に)書いてある日時を調べてみましたら、たしかに、その時期に該当する仕事はありましたが、それは盗聴などではありません。他の人からの調査依頼で行なった、張り込み調査です。昼でも夜でも写る特殊なカメラを持って行って設置し、張り込んだわけです。その目的? それは私は依頼者ではないから、分かりません。でも、探偵社としては、合法的な範囲での、普通の仕事ですよ」(同)

(株)帝国リサーチの社長・福田は、「昼でも夜でも写る特殊なカメラ」を設置して「張り込んだ」ことをみずから認めているのである。これは大変なことである。しかも同社長はその昼夜兼行の監視行為をおこなったことを堂々と認めたうえで、それを「合法的な範囲」「普通の仕事」と公言してはばからない。このことは(株)帝国リサーチが、極めて特殊な調査をおこなう会社であることを、社長みずから認めたということになる。

断るまでもないが、この特殊カメラを使っての張り込み云々という社長自身の発言は、犯罪の核心を形成する電話盗聴行為を隠すため、あえて実行行為の一部を認めたものと思われる。

なお(株)帝国リサーチは、有名な帝国データバンク(かつての帝国興信所・港区)とは別会社。

妙観講が編集する『慧妙』が、極めて特殊な活動をする調査会社社長へのインタビュー記事をこのたび長々と載せたこと自体、両者の特別な関係をなによりもよく物語っているといえる。

(『地涌』第八九九号より一部抜粋)

この『地涌』の報道に対して日蓮正宗は何らの反論もすることはなかった。ただ沈黙するのみであった。しかし、阿部日顕ら宗門中枢はあわてふためいていた。日蓮正宗渉外部長の秋元広学のみならず、総本山大石寺のナンバー2である主任理事の八木信瑩までもが電話盗聴の対象となっていたという異常事態に、宗内の誰もが凍りついたのである。宗内には、この事件について話題にすることすらできない雰囲気が漂った。

◆ばらまかれた盗聴テープの衝撃

このような時、第二の衝撃が宗内を走った。渉外部長である秋元を電話盗聴した際に録音されたテープの一部が、添付文書と共に宗内にばらまかれたのである。その文書の末尾には、次のように記されていた。

「なお、録音テープ送付の目的は、あくまで、宗務役僧の御坊を盗聴しておきながらシラを切り通す大草講頭の不正行為を断固、糾弾するためであり、その為、今回は十一月十三日に回収された百二十分テープのうち冒頭の約二十分のみとし、秋元尊師のプライバシーに関わる部分は極力、カットした上、配布範囲も小数とさせていただきました。悪しからずご了承のほどよろしくお願いします。

草々

平成八年二月十日

有志一同」

電話盗聴された際の録音テープという物証が宗内にばらまかれたのには、私も『地涌』編集部も驚いた。他人の電話での会話を録音する行為ももちろん犯罪であるが、そのテープを不特定多数にばらまくという行為自体も、それ単独で犯罪を成り立たせるものだったからだ。ばらまいた者たちはそういうことを知っているのだろうかと、その行動に私は疑問を持った。

しかし、その一方で、電話盗聴の被害者である秋元広学が、警察に被害届を出す確率は低いだろうと考えた。秋元は、渉外部長の自分だけでなく大石寺ナンバー2の八木信瑩が電話盗聴されたことの意味に気づいていたはずである。つまり、秋元はこの電話盗聴の主犯が誰であるか、思い当っていたであろう。

そして結局、秋元は警察に被害届を出さなかったようだ。

電話盗聴の公訴時効は三年である。電話盗聴が秋元に対して実行されたのが平成三年十一月であるから、この平成八年二月の段階では電話盗聴そのものについてはすでに時効が成立している。しかし、テープをばらまかれたことについては、当然のことながら時効は成立していない。それなのに、秋元は警察に被害届を出さなかったのである。また秋元は、のちに行なわれた三件の訴訟において、電話盗聴を行なったのが(株)帝国リサーチであると確定し、この電話盗聴犯に対して民事で損害賠償請求することもできたがこれも行なわなかった。不可解としかいいようがない。

秋元が電話盗聴された録音テープがばらまかれた直後の平成八年二月十六日、『慧妙』第七五号が発行された。この号に「秋元渉外部長が刑事告訴」という記事でも出ていれば、『慧妙』を主体的に編集する妙観講がこの電話盗聴については「シロ」、すなわち妙観講は電話盗聴に関係がないという説が宗内に登場したかもしれない。

しかし実際には、『慧妙』は(株)帝国リサーチの「福田社長」を再び紙面に登場させ、『地涌』に反論をさせている。実に姑息な手段である。その『慧妙』の一部を以下に紹介する。タイトルは、

「学会怪文書の『盗聴疑惑』の言い掛かりを粉砕!!

調査会社T社社長が怒りの再コメント」

である。

X氏(著者注 記事中では被害者のイニシャル。以下同)については、身辺調査を依頼されたことはありますが、依頼主は大草さんではなく、うちの会社によく顔を見せていた別の人物です。

それに、調査内容も、身辺調査だけで、電話の盗聴などあるわけがありません。違法行為ですから。

――この『地涌』(八九八号)によれば、これも前回お伺いした話(本紙前号参照)と同様、調査の日にちが週休二日のように飛んでいますね。

福田 ええ。それに、X氏宅の盗聴などしていない、ということについては、それ以外にも、出る所に出たときに証明のできる、明確な証拠があるんですよ。

――『地涌』は前回のインタビュー記事によほど動揺したらしく、福田社長が紹介された業務の内容について、「カメラを設置して張り込んだというが、これは大変なことだ。極めて特殊な調査を行なう会社だ」などと書いていますが。

福田 (笑い)まず、私達の業務の所轄庁は警視庁なんです。うちの会社も警察の保安課の指導のもとでやっているわけです。

したがって、私達の業務内容は、あくまでも合法的な範囲内での仕事なんです。

――警察が認めた範囲での業務ということですね。

福田 そうです。私どもが張り込み調査をしたことが大変な問題だというなら、警察に文句を言いに行ってみたらどうでしょうね。逆に「調査会社の仕事としては当たり前でしょう」と言われるんじゃないですか。(平成八年二月十六日付『慧妙』より一部抜粋)

「福田社長」の言い分だと、秋元広学が住職を務める宣徳寺への監視活動が「警察の保安課の指導」で行なわれていたということになる。宗教法人への監視を「警察の保安課の指導のもとでやっ」たというのであるから、これは大変な問題であると考えるのが普通である。ところが『慧妙』は『地涌』の報道をもみ消すことに躍起となり、こういう道理の是非すら忘れている。

また、「福田社長」は「警察に文句を言いに行ってみたらどうでしょうね」などと言っているが、「警察に文句を言いに行」くべきなのは、日蓮正宗か電話盗聴の被害にあった宣徳寺住職である秋元広学である。

◆「張り込み調査」は言い訳にならない

このような支離滅裂な屁理屈を「福田社長」が『慧妙』の記者に話し、『慧妙』の記者が記事にし、『慧妙』の監修者である理境坊住職の小川只道もそれで了承して『慧妙』が全国寺院に配布・販売され、住職たちも異を唱えることなく宗内に徹底されているのである。日蓮正宗は本当に道理がわからない宗派ということになる。

繰り返すが、「福田社長」は日蓮正宗の末寺に対して「張り込み調査」を行なったと言っている。なのに被害者であるはずの日蓮正宗側の誰もがそのことを咎めない。これはいったい、どういうことなのであろうか。

『慧妙』が「福田社長」のインタビュー記事を掲載した時点で、宗内の多くはこの一連の電話盗聴事件の背景にいる真の首謀者が誰なのか、感づき始めていた。誰がいるのかがわかっているからこそ、権威に隷属することによって延命を図ろうとする末寺住職らの沈黙が、宗内を覆っていったのである。

電話盗聴されたテープをばらまかれた秋元広学が警察に被害届を出さなかったことと同様に不可解なことがもう一つある。それは『地涌』によって電話盗聴犯であると名指しされ報道された妙観講やその講頭・大草一男が、名誉毀損であるとして刑事告訴をしなかったことである。

はっきり述べておこう。まさに電話盗聴の犯人であるからこそ、警察に刑事告訴するなどの法的手段をとることができなかったのである。「福田社長」の「緊急インタビュー」などを『慧妙』に掲載して対抗するより、『地涌』それ自体を名誉毀損で告訴することのほうが、『地涌』に対する反撃としては、はるかに効果的である。しかし、自分たちが犯人であるゆえに、とてもそのようなことはできなかったのである。

(株)帝国リサーチの「福田社長」は、『慧妙』のインタビューにおいて、「どこへでも出ていって決着をつけます」と威勢のいいことを言っていたのだが、そのわずか四カ月後の平成八年六月一日に(株)帝国リサーチを解散させてしまった。『地涌』が報道で示した物証の中に、電話盗聴テープや(株)帝国リサーチ発行の書類があることによって法的措置を講じられることを恐れ、それこそ警察の強制捜査すら予測して、自分の会社を潰すという大胆な証拠隠滅行為を行なったのである。

これが大草らとの共謀によって行なわれたものであるかどうかについての確証はない。読者の想像に委ねるしかない。ただ確かなことは、大規模な犯罪を行なえば、後始末も大変だということだ。

Page
Top